古人に学ぶ!エアコンだけに頼らず涼しく過ごす住まいの工夫

2022/07/05
  • 二児の母。塾講師、学校教師の経験あり。甘いものと日本の古いものをこよなく愛しております。もっと見る>>

こんにちは。サンキュ!STYLEライターのdanngoです。
早くも猛暑の予感。
温暖化のことを考えるとエアコンをフル稼働させて過ごすのは、少し後ろめたい気がしますね。
冷房のない時代、昔の人はどのような工夫をしていたのでしょうか。

風どおしのよい住まいと庭の遣り水

家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪へがたき事なり。深き水は涼しげなし。浅くて流れたる、遥かにすずし。

『徒然草』第五五段

平安時代の寝殿造りの絵を見ると、内部にほとんど塗られた壁がないことに驚きます。
当時の貴族の住居は夏を快適に過ごすことをメインにしてつくられていました。
部屋を仕切るのは主に引き戸なので、開け放せば風が通るしくみ。

プライバシーを保つために几帳というカーテンつきのついたてを置きましたが、三尺(約91センチ)または四尺(約121センチ)と背の低いもの。
夏用の几帳には涼しげな生地が使われ、風が通るようにわざと縫い合わせていない部分もつくられていました。

今は冷房の発達により通気性より断熱性が重視された住まいが多くなっていますが、夏の間は冷房や扇風機の風が通りやすいよう家具の配置を工夫してみましょう。
できれば大きな家具は部屋の中心より壁際に置くようにすると、空気の流れが良くなります。

続いては遣り水(やりみず)の記述ですが、これは川などから水をひきこんで庭に流した水路のこと。

深く流れる遣り水はあまり涼しくないというのは的を射た表現だと思います。
同じ水量なら深い流れより浅い流れの方が空気に触れる面積が多くなり、より気化熱を奪うからです。

現代の家で水を流すのは現実的ではないので、打ち水がおすすめ。
穴をあけたペットボトルを使えば、手に持っているだけで広範囲に水をまくことが可能です。

光源を遠ざける篝火

月もなきころなれば、灯籠に大殿油まゐれり。「なほけ近くて暑かはしや、篝火こそよけれ」とて、人召して、「篝火の台一つ、こなたに」と召す。

『源氏物語』常夏

「灯籠(とうろ)」は軒先にひっかける釣灯籠のことで、室内からあまり離れていないため暑かったようです。
篝火(かがりび)は庭でたく火なので、炎の熱を感じることなく明るさをえられます。

いと涼しげなる遣り水のほとりに、けしきことに広ごり伏したる檀の木の下に、打松おどろおどろしからぬほどに置きて、さし退きて点したれば、いと涼しくをかしきほどなる光に、女の御さま見るにかひあり。

『源氏物語』篝火

遣り水の近くでたくことで水面に光が反射し、イルミネーション効果により涼しげな雰囲気をつくることもできたのでしょう。

現代の家でも、光源を遠ざけることで涼しくなります。
電球のそばに手を近づけるとわかるのですが、照明は周囲の空気を温めてしまいます。
自分がいる部屋の天井の明かりをこうこうとつけっぱなしにしていれば、暑くなるのは当たり前。
私は夏の日、家に1人でいる時は遮熱性の高いレースのカーテンだけをひいて外の光を入れ、かわりに天井の電気は消します。

分厚いカーテンをひいて部屋に明かりをつけるより、ずっと涼しく感じられますよ。

寒色系の色で体感温度を下げる

指貫は 紫の濃き。萌黄。夏は二藍。いと暑きころ、夏虫の色したるも涼しげなり。

『枕草子』二六三段

平安時代は、季節により衣装の色を変える習慣がありました。
夏用の衣の色としてよく好まれた「二藍(ふたあい)」は青みがかった薄い紫で、清涼感のある上品な色でした。
夏虫の色というのは瑠璃色または薄い緑色かと言われていて、オオミズアオなどの夏に見かける昆虫の羽を連想させる季節感のある色だったと思われます。
女性は生絹(すずし)の単衣(ひとえ)という透け感のある衣装もよく着用し、色は白が好まれました。

平安時代は年に2回、4月と10月に衣替えをし、部屋の中で使う調度などのインテリアも季節を反映したものに交換されました。
目に入るものの雰囲気を変えることで、視覚的に体感温度を下げる工夫が凝らされていたのです。

現代なら、カーテンやラグやテーブルクロスなど、大きめの布ものに寒色系の色を取り入れると良いでしょう。
黒や赤を基調としたモダンなインテリアやビタミンカラーを取り入れた内装も素敵ですが、夏はやはり青や紫や緑、または白を入れた方が涼しげです。

古典文学作品の記述や当時の生活様式から、現代に取り入れられそうな住まいの工夫を集めてみました。
現代には合わない方法もあるかもしれませんが、エコなアイデアとしてできそうな部分だけでも取り入れてみると良さそうです。

※引用文献
神田秀夫・永積安明『新編日本古典文学全集44 方丈記 徒然草 正法眼蔵随聞記 歎異抄』小学館、1995年
阿部秋生・秋山虔・鈴木日出男『新編日本古典文学全集22 源氏物語3』小学館、1996年
松尾聰・永井和子『新編日本古典文学全集18 枕草子』小学館、1997年

◆記事を書いたのは・・・danngo
物心ついた時から生き物大好きだった40代主婦。美しく平和な地球と子どもの未来を守りたいと考えています。面倒くさがりのため、できるだけ手抜きしてズボラでもできるエコ活動を模索中。

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