めも

「希望」と「幸福」の違いは? ~8年前のメモより~

2024/05/11
  • 気象予報士として講演・執筆を行うかたわら、野菜たっぷりの作り置き料理を代行する出張料理人としても活動中。野菜ソムリエ、食育インストラクター、薬膳マイスターなどの資格や、東北~関西まで各地に住んだ経験から、健康や美容にうれしい食材や、いざという時に備える災害食にも詳しい。 もっと見る>>

大型連休中、遠出をする予定もないので家の掃除をしていたら、ずいぶん昔のメモが出てきました。
どこかの大学の先生の講演を聞いた内容らしいメモの日付は、2016年11月11日。今から8年近くも前です。

誰の何の講演を聞いたかわからないその走り書きのメモには、「希望と幸福の違い」という文字が。
8年前のメモが問いかける、希望、夢、勇気、幸福、そして絆にまつわるエトセトラです。

「希望」と「幸福」の違いは?

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裏紙に鉛筆で走り書きしたメモ。まさか8年後に発見されるとは当時の私は想像もしなかっただろう。

おそらくそのメモは、社会学者の先生の講演を聞いたときに書いたもののようでした。
そもそも「希望」と「幸福」を比較したことが私にはありませんが、どうやらその先生によると、比較すべきもののようです。

メモによると、「幸福」は「続けたいもの」であり、継続するものと相性がいい、とのこと。
対して「希望」は、「今はそうじゃないもの」であり、変化と相性がいいようです。

続けたいものと変えたいもの…、たしかにそう言われると「希望」と「幸福」は対照的なものに見えてきます。

また、「希望」に似た言葉に「夢」がありますが、「夢」は無意識に持つことが多く、理由がないこともある、とのこと。
さらに「勇気」は「最悪を受け入れる覚悟」と書かれていました。

「幸福」に関する研究は多い

メモによると、「希望」は学問にしづらい、とのこと。
「幸福」に関する研究は多いけど、「希望」に関するものは少なく、その先生は苦労して研究されたようです。

「希望」という言葉は、挫折や試練、絶望、修羅場といった言葉とともに使われることが多い。
そこで先生は、挫折や絶望をくり返している土地へフィールドワークに行くことにしました。
選んだ土地は、水俣(熊本県)と釜石(岩手県)です。

「東大さん」と呼ばれて

岩手県釜石市
岩手県釜石市の農村風景(筆者が以前訪れた際に撮影)

水俣と釜石に行った先生の感想は、一言「甘かった」と書いてありました。
自分の考えが、甘かった、と。

まぁ当然と言えば当然かもしれませんが、都会から急に学者がやってきて「希望に関する研究をしています」とか言われても、ふつうは警戒しますよね。

メモには、そもそも言葉が通じないし、みんなに警戒されるし、「東大さん」と呼ばれたと書いてありました。
どうもこの先生は、東京大学の学者のようです。

それでもあきらめずに何度も何度も通い続けると、しだいに打ち解けていったといいます。

「希望」は「家」みたいなもの

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消しゴムを使う時間も惜しんで殴り書きされていた。

執念のフィールドワークの末に「希望」についてよくわかったかというと、そうではなかったようです。
メモには、「希望なんてわからない」とありました。

「希望なんてわからない、わからないけど、希望に『棚からボタ餅』はない」。
「人から与えられるものではない、苦しくてももがいているうちにぶち当たるもの」。
「希望は自分で作るもの、希望は家みたい」。
メモには箇条書きでそう書いてありました。

そして、「希望」という名の「家」を支える4本の柱として、
・wish(願い、気持ち)
・something(具体的な何か)
・come true(実現可能性を探る)
・action(動く、もがく)
というメモがあり、最後に
「Hope is a wish for something to come true by action.(希望とは何か具体的なものを願い実現しようともがくもの。)」
という英文が添えられていました。

ひとりで「希望」を作れないときは

めも

「希望」に必要な4つの柱のメモの横には、「希望を作れない人は4つの柱のうちどれかが足りない」とも書いてありました。
そして、ひとりで「希望」を作るのが大変なときに助けてくれるのが「絆」である、とも。

社会学的には「絆」は2種類あり、「強い絆(strong ties)」と「弱い絆(weak ties)」があるそうです。
前者は、安心感を与えてくれる大事な仲間で、「幸福」につながるもの。
そして後者は、頻繁に会うわけではないけど信頼でつながっていて、自分にはない視点を与えてくれるもの。絶望の中で希望の存在に気づかせてくれるもの。

先生は前述の釜石に震災後も訪れたそうですが、そこでも「弱い絆(weak ties)」の重要性に気づいた人が多かったようです。

「弱い絆」はありますか?

絆

私には、5年か10年に一度だけ連絡をくれる知人がいます。
いつも忘れた頃に短い連絡をよこして、こちらから返事をしても向こうからの再返信はありません。

このさきお互い平均寿命まで生きたとしても、死ぬまでにあと数回しか言葉を交わすことがない、そんな蜘蛛の糸でつながっているような知人ですが、もしかしたら先生の言う「弱い絆」なのかもしれない、とも思います。

皆さんには、「弱い絆」でつながる人がいるでしょうか。
あるいは、今はいなくてもこれから出会うかも?

もしそんな人がいたら、あるいはこのさき出会ったら、ぜひ大切にしてください。
あなたがどうしようもない絶望の中にいるときに、希望を思い出させてくれるのはその人かもしれません。

■この記事を書いたのは・・・サンキュ!STYLEライター植松愛実
身近な食材でできる時短作り置き料理やパーティー料理、簡単に彩りを増やせる料理のコツや、いざという時に備える災害食まで、「食」に関する情報を発信。また、東北や東海、関西にも住んだ経験から、各地の伝統的な食材にも詳しい。野菜ソムリエ、食育インストラクター、気象予報士など保有資格多数。

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