春野菜

春野菜はなぜおいしい?意外なワケとかしこい食べかたを野菜ソムリエ・気象予報士が解説

2025/03/19
  • 気象予報士として講演・執筆を行うかたわら、野菜たっぷりの作り置き料理を代行する出張料理人としても活動中。野菜ソムリエ、食育インストラクター、薬膳マイスターなどの資格や、東北~関西まで各地に住んだ経験から、健康や美容にうれしい食材や、いざという時に備える災害食にも詳しい。 もっと見る>>

菜の花やアスパラガス、スナップエンドウなど、春に旬を迎える野菜には人気の高いものが多く、春ならではの特徴ある味や香り、食感の野菜が多いですよね。

じつは春野菜がおいしいのには、春の気候ならではの理由があり、なかには意外と複雑なしくみも…!?
そして、その理由を知ることでより一層、春野菜をおいしく&かしこく食べることができるのです。気象予報士・野菜ソムリエのサンキュ!STYLEライター・植松愛実が解説します!

「やわらかい」には理由があった!

アスパラガス

春は、寒かった冬が終わって一気に気温が上がる時期。とくに地面付近では、日照時間が長くなった太陽の光をあびて、いち早く温度が上がり始めます。すると、植物の成長スピードもグンと上がることに。

一般に植物は茎や葉が大きくなるとき、伸びる→固く丈夫になる→伸びる→固く丈夫になる…をくり返しますが、一気に成長している最中にタイミングよく収獲することで、やわらかい状態でいただくことができるのです。

「ほろ苦い」には理由があった!

菜の花

春に旬を迎える野菜のなかには、菜の花や、ふきのとうやタラの芽といった山菜など、独特のほろ苦さを持つものもありますよね。こういった苦味成分は、少し食べる程度であれば言わば"薬"として作用し、体の新陳代謝を高めるほか、解毒作用のある成分もありますが、食べすぎるとおなかを壊してしまいます。

山菜など春先にいち早く土から芽を出す植物は、冬眠明けのクマなどさまざまな動物に真っ先に食べられてしまうので、大量に食べられすぎないよう、こういった苦味成分をそなえていると考えられているのです。

「香りがよい」には理由があった!

三つ葉

春野菜にはさまざまな香り成分が含まれていますが、せりや三つ葉、セロリなどにはテルペン類と呼ばれる仲間の香り成分が共通して含まれています。テルペン類の香りには精神を安定させるリラックス効果があり、みなさんもふだん、なんとくなく「いい香りがするな」「気持ちがスッとするな」と思いながら春野菜の香りを感じているのではないでしょうか。

ただ当然ながら、野菜は私たち人間を喜ばせるためにわざわざテルペン類を含んでいるわけではありません。じつは、植物の葉を食べるタイプの昆虫がこういった野菜をかじったとき、テルペン類の香りが広がることで、その昆虫たちの天敵であるハチが呼び寄せられるのです。私たちにとっての「よい香り」は、意外と複雑な野菜の"防御システム"だったのですね。

特徴にあわせた調理とは?

料理

ここまで、春に旬を迎える野菜だからこその味や香りのワケを見てきましたが、これらの特徴にあわせた調理をすることで、よりおいしく&かしこく味わうことができます。

やわらかさを最大限活用しよう

たとえばアスパラガスは、春先から初夏まで比較的長い期間、旬が続きますが、なかでも春先に出荷されるものがもっともやわらかく、水分も多く香りもよいのが特徴です。そのため、旬の走りに手に入れたアスパラガスは、長時間加熱するのをさけて、サッと炒めるなどの調理がおすすめ。

また、近年人気の高いスナップエンドウは、生でも食べることができるやわらかさなので、栄養を少しも逃したくない!という人は、ぜひ生でも食べてみてください。

ほろ苦さと上手につきあおう

菜の花などの独特のほろ苦さは、多少であれば食欲をそそるものの、苦すぎると逆に食欲が落ちてしまいますよね。そんなときは、油を使った調理をすることで、苦味をほどよく抑えることができます。

ゴマ油やオリーブオイルなどを使った和え物や、肉と一緒に炒める料理もおすすめ。ほろ苦い系の野菜は、基本的には牛肉・豚肉・鶏肉のいずれとの相性もよい傾向にあります。たとえば豚肉を使う際は豚バラスライスなど脂身の多い肉を使うことで、より苦味を感じにくくすることができますよ。

香りを主役にしよう

せりや三つ葉など香りのよい野菜は、薬味のように「わき役」で使われることが多いですが、実際には「主役」も張れる野菜たちです。

たとえば肉と一緒に炒めてもいいですし、スクランブルエッグに入れたりパスタの具材にしたりと、洋風の調理にも意外にあいます。なお、肉やほかの具材と一緒に加熱する際は、せりや三つ葉を入れるのを最後にして、香りや食感がほどよく残るようにしましょう。

春野菜をおいしく&かしこく食べよう

春ならではの香りや食感に出会える季節。意外と複雑なそのしくみは、春野菜自身が生き延びるためにも必要なだけでなく、私たち人間にとってもうれしい栄養や風味につながっています。ぜひ春野菜の特徴をうまくいかした調理をして、おいしく&かしこく楽しみましょう!


■この記事を書いたのは・・・サンキュ!STYLEライター植松愛実
身近な食材でできる時短作り置き料理やパーティー料理、簡単に彩りを増やせる料理のコツや、いざという時に備える災害食まで、「食」に関する情報を発信。また、東北や東海、関西にも住んだ経験から、各地の伝統的な食材にも詳しい。野菜ソムリエ、食育インストラクター、気象予報士など保有資格多数。

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