「台風一過の青空」ってホント⁉台風シーズンを乗り切る知恵を気象予報士が解説

2023/08/24
  • 気象予報士として講演・執筆を行うかたわら、野菜たっぷりの作り置き料理を代行する出張料理人としても活動中。野菜ソムリエ、食育インストラクター、薬膳マイスターなどの資格や、東北~関西まで各地に住んだ経験から、健康や美容にうれしい食材や、いざという時に備える災害食にも詳しい。 もっと見る>>

「台風一過の青空」というフレーズを聞いたことのある人は多いのではないでしょうか。

台風が過ぎ去ると一気に天気が回復して日ざしが照りつける…そんな光景を表した言葉ですが、実際のところ、そんなにすっきり晴れることが少ないように感じている人もいると思います。

「台風一過の青空」は本当なのか?今回は、気象予報士と料理人の2足のわらじを履くライター・植松愛実が、人に教えたくなる豆知識を解説します!

「台風一過の青空」は意外と繊細⁉

じつは台風通過後にすっきりとした青空を拝むためには、いくつもの条件が必要です。
中でも重要なのが、台風通過後の風向き。

おおまかな傾向として、台風通過後に吹く風が北風だと晴れることが多くなりますが、南風だと雨が降りやすくなります。

日本列島を縦断する台風と風向きのイメージ(気象庁HPを元に筆者作成)。2023年のお盆を直撃した台風7号の場合、台風本体が日本海へ抜けたあと静岡県に南風(図右下の赤い矢印)が吹き込んで大雨に。新幹線の運休など大きな影響が出た。

もし台風が日本列島を南北に縦断していくようなルートを通った場合、特に太平洋側では台風周辺の反時計回りの風によって南風が吹き込むことになり、雨が降りやすい状態に。

しかも南からの風というのは雨雲の材料となる水蒸気を多く含んだ湿った風なので、ゲリラ豪雨のような激しい雨になることすらあるのです。

たとえ北風が吹いても…

日本付近で北風が吹く場合、たいていは晴れやすいのですが、この北風が雨につながることもあります。

たとえば、日本海の海水がいつもより温かいとき。
通常は夏の間、南側の太平洋と比べて日本海は冷たいので、太平洋から風が吹く場合(南風)と比べ日本海から風が吹く場合(北風)は雨雲が発達しにくいと言えます。

ところが日本海の海水が通常よりも温かくなっていると、温かい海から吹いてくる風は上昇気流を発生させやすく、もくもくと積乱雲が発達してしまうのです。

つまり、せっかく「台風一過の青空」が成立しそうな北風が吹いても、結局雨が降ってしまうことになります。

過去には「台風一過の雪」も

台風シーズンは例年、おおむね10月頃まで続きますが、秋が深まるにつれて台風通過後の北風が強い寒気を引き込むことがあります。

もともと秋になると、雨が降るたびに一段と寒くなっていくのを実感する人は多いと思います。
つまり、通常の低気圧が通過して雨が降るだけでも寒気が引き込まれることがあるわけですが、台風はその威力が強いのです。

たとえば2017年10月に上陸した台風21号は、通過後に北海道~関東甲信の各地で雪を降らせました。
さすがに雪まで降るのは極端な例だとしても、寒気が引き込まれれば当然ながら気温が下がります。

「台風のあと晴れるときは暑いはず」と思い込んでいると、急な冷え込みで風邪をひいてしまうことも。
「台風一過」のバリエーションの広さには要注意です。

思い込みよりも天気予報を活用しよう

近年の天気予報はかつてと比べ格段に当たるようになっていて、たとえば翌日に雨が降るかどうかの予報は年間平均で83%くらい的中するようになりました。

ゲリラ豪雨のような予測が難しい現象が起きる日も含めて平均で80%を超えているわけですから、もう特別な事情がなければ「だいたい当たる」と思っていいレベルになってきているのです。

そのため、天気予報を確認することの利便性は以前よりも上がっています。
「台風は通過したみたいだし明日はどうせ晴れるでしょ」と思い込んでしまう前に、テレビでもネットでもいいので天気予報を確認してみましょう。

予想外の天気や気温に悩まされることが減ると、家事や育児のストレスも減ります。
便利になった天気予報をどんどん活用していきましょう。

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