「○○しないで」と子どもに言ってはダメ?その理由は?
チャイルドコーチングアドバイザーで、サンキュ!STYLEライターの山名美穂です。
子どもに指示を出すとき、否定形「~しないで」を使うのはやめましょうーーー
聞いたことのあるお母さんも多いですよね。では、どう伝えたらいいのでしょうか。また、この話は本当でしょうか。
「~しないで」は、して欲しくないことをイメージさせる
逆立ちするピンク色の象を想像しないでください。
上の一文を読む途中で、逆立ちをするピンク色の象を想像し始めませんかでしたか?
脳は、否定文の中の「打消したいはずのことば」を拾ってしまいます。
子どもに「忘れ物をしないで」と言えば「忘れ物をする」ことを、「お茶をこぼさないで」は「こぼす」ことを想像させます。
そして、そのマイナスのイメージが行動に影響し、忘れ物をしたりお茶をこぼしたりという、望むものとは逆の結果につながりうる。
この話は、みなさんご存じかと思います。
肯定的な表現に変える
そんな現象を避けるために、子どもへの指示は「肯定的な表現で行うのがよい」とされます。
例えば
■忘れ物をしないで
→ 必要なものをすべて持っていこう
■ゲームばっかりしないで
→ 本を読もう
→ 他の楽しいことをしよう
などと言い換えればいいでしょう。
「脳は否定を理解できない」はウソ?ホント?
「こぼさない」と言わても「こぼす」のを思い浮かべてしまう。「走らない」と言われても「走る」イメージが見えてしまう。それは「脳が否定を理解できない」からであるーーー
そんな話を、見聞きしたことはありませんか。
同時にインターネットでは「脳は否定を理解できないはウソ」という反対意見も散見されます。
「理解できないなら、世の中で否定文が成立しない」「否定"Don't"が先にくる英語では機能しない」などが、「ウソ」とする方々の主張だったりします。
「脳は否定を理解できない」がウソだとしたら、「『~しないで』という子どもへの声掛けはしないほうがいい」もウソ……?
当然ですが、人間は否定文の意味を理解できます。
そして、脳は否定を理解・認知できません。
どういうこと⁈
否定を用いて、伝えたいことを相手に届ける方法
NLP(神経言語プログラミング)に「自分が望むことを、否定文で相手に伝える」スキルがあります。
わたしが下のように言ったとしましょう。
「この記事を、楽しみすぎないでくださいね」
聞いた人は、文章理解の過程で一旦「楽しんでいる」状態を想像します。もともと、楽しいともつまらないとも、なんとも思っていないなくても、です。
否定されているにも関わらず、相手は無意識に、わたしの本来の望みである「記事を楽しむ」様子を頭の中に見る。
わたしの要望が、イメージとして伝わったことになります。
直接的に「楽しんでください」と言うよりも、否定文を用いた方が相手の抵抗を受けず、効果的に思いを届けられることがある。
これが、NLPの「脳は否定を認知しない」仕組みを使ったメッセージの伝え方です。
人が否定文の意味自体を理解できないという話ではありません。
また文全体を理解する中で起こることですから、否定語が文頭文末どこに入るのかも、問題ではいはずです。
このように「脳は否定を理解できない」は、して欲しくないことを回避するというより、こちらの希望を伝えるための概念です。
「こぼさないで食べてね」と言われた子どもが、否定の文章そのものを理解しないのではありません。また、こぼす自分を鮮明に想像しながら食べるわけでもないでしょう。
「こぼさないで」のことばで、誰も望まない「こぼす」状態をわざわざ子どもに思い起こさせる必要はないよね、という話だとわたしは認識しています。
肯定文で伝えるクセをつけよう
ややこしく感じた方も、そうでない方もいらっしゃいますね。
子どもには否定文より肯定文で伝えるのがいい。基本的には、そう思ってもらえれば大丈夫です。
まずは、自分がどんなことばで子どもと接しているか、観察してみて。
否定的な表現をしてはいけない?そうではありません。肯定的に伝えるといいのです。
「忘れ物しないでよ!」と言ってしまったら、すぐに言い換える。追加で「全部持ってね」とフォローすればいいです。
お母さんが「否定文を使う自分はダメ」とご自身を否定することが、わたしにとっては一番苦しいです。
子どもにうまい声掛けができなかったと感じても、「気づいたわたしはすごい」と認めてください。
やがて自分にも子どもにも肯定的になります。そして発することばも、自然と変わっていくのです。
■この記事を書いたのは…山名美穂
チャイルドコーチングアドバイザー(R)、全米・日本NLP協会NLPプラクティショナー、LABプロファイル(R)プラクティショナー。ウェブライター、ストーリーライターとしても活動中。サンキュ!STYLEでは、子育てや人間関係を中心に、主婦の身近なトピックを扱って執筆しています。