なんで今?テスト前に子どもが部屋の掃除を始める「セルフ・ハンディキャッピング」とは
チャイルドコーチングアドバイザーで、サンキュ!STYLEライターの山名美穂です。
テスト前になると、なぜか部屋の掃除や片づけを始める。そんな子どもの姿を見たことがありませんか。
あるいはご自身の学生時代を振り返って、思い当たる方もいらっしゃるかもしれません。
この「テスト前に掃除したくなる衝動」は、一体なんなんでしょうか。
テスト前の掃除の理由は「セルフ・ハンディキャッピング」
この行動は心理学で「セルフ・ハンディキャッピング」と呼ばれるもので、「自分で自分にハンデを課すこと」を指します。
自分自身に不利な条件づけをして、失敗しても自尊心を守ろうという気持ちから起こります。
テストが好ましくない結果で終わっても「掃除が理由で、十分な準備ができなかったから」と言い訳できるようにしているんですね。
セルフ・ハンディキャッピングとは
掃除をやめさせても、他のことを始める可能性大
セルフ・ハンディキャッピングにおいて、部屋の掃除はあくまでも「言い訳を作る手段」でしかありません。
ですので、このタイミングで「普段から片づけておきなさい」とか「勉強が終わってからにしなさい」とか、掃除自体に言及してもあまり意味がないです。
掃除を禁じられたら、恐らく子どもは他のことを始めます。例えば、読書とか筋トレとか……。
セルフ・ハンディキャッピングをする子どもの本音は「自信がない・失敗が怖い」
本人も気づいていないかもしれませんが、子どもがテスト前に掃除を始める本当の理由は「自信がない・失敗が怖い」、そして「自尊心を守りたい」です。
そんな心情にある子どもを「もっと早く勉強を始めるべきだった」「どうして、あなたはいつもそうなのか」と、責めたり叱ったりすることは妥当でしょうか。
そうではないと、ご存じですよね。
テスト前に起こる子どものセルフ・ハンディキャッピング、親としてできることはなにか
普段から万全の態勢でテストに臨めるよう、学習できるのが理想かもしれません。しかし、毎日勉強していれば100%の自信を持って当日を迎えられるかというと、そうでもないですよね。
多かれ少なかれ、どの子も不安を抱えているはず。テスト前の限られた時間、少しでもその不安や恐怖を取り除いてあげるのが、いいのではないでしょうか。
できる範囲での勉強でいいと声をかけるのもそうですし、テストに備えて早く就寝してもらうのもひとつだと思います。
親としてやることに、正解はありません。そして忘れないで欲しいのは、自尊心を守るためにセルフ・ハンディキャッピングをするということ。それさえ分かっておけば、好ましい関わり方がおのずと見えてきますよね。
誰にでも起こりうる「セルフ・ハンディキャッピング」
ここまでお読みいただいてお分かりのように、セルフ・ハンディキャッピングは子どもに限って起こるのではありません。
あらかじめ「できない・やらない理由」を準備して、予防線を張ることは大人でも往々にしてあります。
ご自身が「いまひとつ行動にうつせない」「つい他ごとをしてしまう」と感じるとき、セルフ・ハンディキャッピングをしていないかを客観的に見られる視点。それを普段から持っておけるといいですね。
そして不安を抱えながらも、目の前のできることに注力していく。そんな姿勢を、子どもに見せられたらいいんじゃないかなと思います。
■この記事を書いたのは…山名美穂
チャイルドコーチングアドバイザー、全米/日本NLP協会認定マスタープラクティショナー、LABプロファイルプラクティショナー
コーチングや心理学NLPの考えをベースに、子育てや女性のマインドの記事を中心に書いています。
*NLP=神経言語プログラミング。脳とこころの取り扱い説明書とも言われる、実践的心理学です。
心理学の用語で、たとえ失敗しても自尊心を保てるように、あらかじめ自分にはハンディキャップがあると主張したり、実際にハンディキャップを作り出してしまうことをいう。試験の前に、風邪で勉強が十分にできなかったと言い訳をして予防線を張ることなどがこれにあたる。