浴衣をできるだけ苦しくなく着たい!ポイントは「手がアイロン」!?着付け師が解説
- 気象予報士として講演・執筆を行うかたわら、野菜たっぷりの作り置き料理を代行する出張料理人としても活動中。野菜ソムリエ、食育インストラクター、薬膳マイスターなどの資格や、東北~関西まで各地に住んだ経験から、健康や美容にうれしい食材や、いざという時に備える災害食にも詳しい。 もっと見る>>
盆踊りや花火大会だけでなく、最近は浴衣で入店すると割引になるカフェや、和装で訪れると映える写真が撮れる美術館・博物館など、「久しぶりに浴衣を着てみたいな」と思う機会が増えてきました。
でも、浴衣や着物って、どうしてもお腹のあたりが苦しい…。
そんな悩みを解決するべく、京都仕込みの着付け師がポイントを解説します!
そもそもなぜ苦しくなるのか
浴衣や着物を着ていて苦しいのは、同じような場所に何本も紐を結んでいるからです。
つまり、解決するためには、紐を結ぶ場所を変えるか、紐の本数を減らすことになります。
ここで浴衣ならではのテクニック「手がアイロン」が活躍するのが、後者の"紐の本数を減らす"解決法なのです。
「手がアイロン」の活躍は帯を結ぶ前!
浴衣を羽織って裾を合わせ、ウエスト部分で最初の腰紐を結んだ後、通常は帯を結ぶ前に「おはしょり」をきれいにする作業に入ります。
身長が十分に高い人の場合、腰紐を結んだあとにウエスト周りの布のシワを伸ばすだけで足りますが、そうでない場合は「おはしょり」の調節が必要になり、着物と同じ感覚でやろうとすると、どうしても腰紐(あるいはマジックテープ付きのゴムベルト)がさらにもう1本必要になってきます。
(「おはしょり」の長さは、帯を締めたときに帯の下に出ている浴衣の布の部分が、自分の人差し指の先端から根元までの長さと同じになるのが理想です。)
ここで活躍するのが、浴衣ならではの技「手がアイロン」。
「おはしょり」をちょうどいい長さに整えたら、手で浴衣の表面を押すようになぞり、手の温度でプレスするように押しつけていきます。
「いやいや手の温度なんてアイロンほど高温じゃないから、大して効果ないでしょ?」と思うかもしれませんが、一度だまされたと思ってやってみてください。
これが意外としっかりプレスされるのです!
手を離しても落ちてこなくなったらOK。
あとは伊達締(だてじめ)だけ締めれば、帯を結ぶ作業に移行して大丈夫です。
しかもこの伊達締も、ぎゅっと結ぶ必要はまったくありません。
「落ちてこない」レベルで十分。
なぜならこのあと同じ場所に帯も結ぶわけですから、伊達締の役割は「ウエストのあたりをだいたい平らにする」ことだけなのです。
着物ではできない技「手がアイロン」
着物は絹でつくられたものでもポリエステル100%でも、あるいは伝統的な「絽(ろ)」や「紗(しゃ)」といった素材でも、パキッと折ることはできません。
一方で浴衣は、折れ目を鋭くしてきっちり折ることが可能。
昔ながらの綿でできた浴衣はもちろん、最近の化学繊維のものも綿の質感を真似て作っているので、パキッと折って固定しやすいのです。
このため、紐を減らす選択肢が可能になるのです。
「なくてもいい」モノを1つず減らして楽に!
着物の場合、「おはしょり」を綺麗にして腰紐orゴムベルトで留めたあと、伊達巻を締めてさらに帯板をつけます。
というのも、たいていの着物に合わせる帯は、ウエスト部分が完全に平らな状態になっていないときれいに仕上がりづらいため。
一方で浴衣の場合は通常、比較的結びやすい半幅帯や、さらに扱いが簡単な絞の帯や兵児帯(へこおび)など、ウエスト部分が「だいたい平ら」であれば済むものばかり。
(兵児帯は従来、男性や子どものための帯でしたが、最近は大人の女性用でおしゃれなものがかなり出回っています。)
そのため、帯板も必要ありません。
とにかくウエスト周りに装着するものを1つずつ減らしていって、少しでも楽に浴衣を着てみましょう。
■この記事を書いたのは・・・サンキュ!STYLEライター植松愛実
本業の気象予報士と副業の料理人、2足のわらじを履く主婦。京都在住時、西陣織工業組合で着付けの師範資格を取り、伝統行事での着付けや和装イベント開催などの傍ら、自らも和装を楽しむ。ちなみにサムネイル写真の浴衣は9歳のときから着ているもの。