【年100冊 本好きママの、心に響く1冊】へんてこだけど愛おしい、小さな家族の物語

2021/12/11
  • 暮らしにまつわるあれこれを幅広く執筆するオールラウンダー。とりわけ北欧インテリア・家計・読書が好き。もっと見る>>

こんにちは、三度の飯の次に読書が好きなサンキュ !STYLEライターのあやをです。

日々読書に勤しむ私が、大人の心に響く本を定期的にご紹介。今回おすすめするのは「家族って面白い」と思える一冊です。

寝込む私へ、夫が届けてくれたもの

私がまだ結婚する前、今の夫とお付き合いしていたときのことです。ある雪の日、高熱で寝込む私のもとへ、突然、夫がお見舞いにやってきたのです。

突然の来訪に驚きながらも招きいれると、「これ」と言って袋を差し出しました。

その袋の中に、風邪薬や冷却ジェルシートと合わせて入っていたのが、飲むヨーグルトの「ジョア」。

「なんでジョア...?」と思いながらも、付き合いたてだったこともあり突っ込んで聞くことはせず、「まあ、胃にやさしそうだからかな」と1人納得し、ありがたく受け取ったのでした。

家族には、その家族だけのルールがある

結婚後に分かったことなのですが、夫の実家では、風邪をひくと必ずジョアを飲んでいたのだそうです。

「その家族だけのルール」ってありますよね。例えば我が家だったら「大晦日にはみんなでハーゲンダッツを食べる」とか、「誕生日には家族全員で”ハッピーバースデートゥーユー”を歌う」とか、「歯を磨くことを”ハミする”と言う」とか。

こういうのって、普通に生活しているだけだとなかなか他の家族に知られることがないので、結婚してはじめて「うちだけのルールだったんだ!」と認識したことも。

結婚後、何の気なしにした行動が、実は自分の家族だけしかしないことだったとき、それを知られてしまったことになんとも言えない気恥ずかしさがある...。

家族のルールって、家族の秘密みたいなものなのかもしれません。

流しのしたの骨 江國 香

この小説には、そんな「その家族だけのルール」が随所に散りばめられています。

主人公の私こと子と、2人の姉、1人の弟、そして父と母。ちょっぴり不思議でへんてこな家族、​​宮下家の日常を描いた物語。

様々な事件が発生するのですが、そのどれもが、ただふわふわと家の中を漂っているようで、一大事感がないのです。宮下家の日々の出来事が、静かに穏やかに、ときにほの暗く、けれどもあたたかく書かれています。

登場人物一人一人がすごく魅力的でいとおしく、淡々と進む文章のリズムも心地よい。

その家族にはその家族のルールがあり、問題があり、成長があり、歴史があり、そしてそこには物語がある。「家族って、面白いな」そんな風に思える一冊です。

我が家のルールってなんだろう?

結婚をすると、今度はその家族の中で新しいルールができ、そして、そのルールが増えるごとに、家族がより家族らしくなっていくような気がします。

他人から見るとへんてこで、でも自分の家族にとっては自然なあれこれ。宮下家の中を覗き見しながら、自分の家族の「ルール」を探してみるのも楽しいですよ。

◆記事を書いたのは・・・あやを
初恋の相手は図書館受付のお兄さん、昼休みに教室の隅で本を読みふけりお外で遊びなさいと注意された小学生時代、村上春樹の小説に感化され登場人物のような女性を目指した中高時代、日本文学科に在籍し芥川龍之介全集を持ち歩いていた大学時代、そして今もなお日々本を読みふける読書マニア。大人の心に響くおすすめ本を定期的に紹介します。

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