【雑学】奥深き方言の世界!地方で呼び方が違うアレに隠された秘密
こんにちは。サンキュ!STYLEライターのdanngoです。
地方に旅行に行ったり帰省したりした時、「これをこんなふうに呼ぶの?」と変わった方言の表現に驚くことはありませんか?
実は、方言でときどき出てくる変わったものの呼び方には一定の法則があることが。
円盤型のあんこいりお菓子の名前は?
厚みのある円盤型の小麦粉を使った生地の中に、あんこがたっぷりつまっているお菓子。
地域によって「今川焼」「大判焼」「回転焼」などの呼び方がありますが、調べてみるともっとたくさんの呼び名があることが判明。
最初は「回転焼」と呼ばれていたこのお菓子、地方に広がっていき地域特有の名称が生まれたようです。
さまざまな事情が関係していて、方言は言葉の歴史の名残のようなものだと思いました。
ふと思い出したのが『蝸牛考』という作品。
柳田国男『蝸牛考』
柳田国男と言えば、折口信夫とともに民俗学の権威と呼んでいい偉大な存在です。
とはいえ、日本文学の研究をした人をのぞけば知らない人の方が多いと思います。
方言の研究に力を入れ、実際に全国の村を訪れて調査した成果の一つが「方言周圏論」といわれるもの。
その「方言周圏論」をまとめたのが『蝸牛考』です。
方言周圏論とは
「方言周圏論」、聞くだけで頭が痛くなりそうですが、さほど難しい論理ではありません。
言葉には流行があり、新しい言葉は流行最先端の土地であった京で生まれて地方に広がっていきました。
そのため、京に近い土地の人の方が新しい言葉を話すことになります。
逆を言えば、京から離れた土地は新しい言葉がなかなか入ってこないため、古い言葉が残り続けることになります。
新しい言葉が生まれるたびに、京に近い地域からじょじょに遠い地域に伝わっていくというのを繰り返すと、京を中心にして同心円状に似た言葉が広がる結果に。
例えば、最も京から遠い九州西部と東北の北部は、地理的には離れているのに似た言葉を使っていることがあります。
この論理を、柳田国男は「カタツムリ」の呼び方で実証しました。
蝸牛(かぎゅう)というのは、「カタツムリ」のこと。
地域によってさまざまな呼び方があり、大きく分けて古い順に並べると「ナメクジ」「ツブリ」「カタツムリ」「マイマイ」「デデムシ」となります。
現在市民権を得ているのが中間領域にある「カタツムリ」であるのは、古代地方の田舎村だった東京が都市になってしまったからかと。
平安後期成立の『梁塵秘抄』には「カタツブリ」、平安後期から鎌倉初期の歌人寂連の歌には「カタツムリ」、与謝蕪村や小林一茶の俳句には「デデムシ」の用例がありおおむね正しい推論だと思います。
僻地や離島など、都市から離れた地に古い日本の言葉が残りやすいというのはよく知られていること。
方言は古文研究にも役立つのです。
そう思うと、方言というのはすばらしい言葉だと思えてきませんか?
地方に行った時は、話のネタにすると楽しいかもしれませんね。
◆記事を書いたのは・・・danngo
中高国語科教員免許を持つ、活字中毒気味のアラフォー。高学歴・高血糖・高齢出産の三高ライター。「家事は化学、子育ては文学」を信条としている。