「人来鳥」っていったい何の鳥?オノマトペの面白さがわかる本
こんにちは。サンキュ!STYLEライターのdanngoです。
暖かくなると、鳥などの動物の鳴き声を耳にする機会が増えますね。
普段無意識に使っているオノマトペ(擬態語・擬音語)について、詳しく研究した本を紹介します。
言葉の変遷の歴史がわかって興味深いですよ。
オノマトペって?
オノマトペという言葉、どこかで耳にしたことがある人もいることでしょう。
私の学生時代に研究をしていた頃は、日本語学の教授がさかんに使うくらいだったものの、最近は一般でも用いられるようになってきています。
要するに、擬態語(ものの様子を表現する言葉)や擬音語(音を表現する言葉)の総称です。
擬音語の中には人や動物の声も含まれますが、それらを別にして「擬声語」として教えることもありますよ。
今回は、オノマトペの中でも擬声語にフォーカスした2つの本を紹介します。
山口仲美『ちんちん千鳥のなく声は』
私の学生時代、「古典における鳥の声に注目して研究したのはこの人だけ」とこの本の内容について教授が絶賛していました。
奈良時代の文献から平安、鎌倉、室町、江戸、はては現代の童謡まで幅広く用例を集める執念、さすがとしか言いようがありません。
カラス、スズメ、ニワトリなどの身近な鳥から、ヌエやウトウなどのマニアックな鳥の鳴き声も集めています。
今知っている鳴き声とは違ってびっくりしますよ。
真っ黒くて大きなボサボサの羽をもつイメージのヌエ、本当の姿に驚きましたね。
私がある程度知っていたのは、古典文学に頻出するウグイスの声。
ウグイスには「春告鳥(はるつげどり)」「人来鳥(ひとくどり)」という異名があります。
春告鳥のほうはわかるとして、人来鳥とは何なのでしょうか。
答えは本を読めばわかりますよ。
山口仲美『犬は「びよ」と鳴いていた 日本語は擬音語・擬態語が面白い』
こちらも山口仲美氏の著作で、『ちんちん~』よりあとに書かれたもの。
タイトル通り、犬をはじめさまざまな動物の古典における鳴き声について研究しています。
擬音語や擬態語全般の性質についても解説されていて、山口教授がいかにオノマトペに夢中だったのかがよくわかりました。
犬の鳴き声が古典文学の中で「びよ」と写されているのは衝撃ですね。
そう言えば、テレビで狂言師が犬の鳴き声を「びょう、びょうびょうびょう」と真似していたのを覚えています。
昔の人は犬の鳴き声を「ビヨ」あるいは「ビョー」と聞きとっていたようです。
どう考えても「ワンワン」とか「キャンキャン」に聞こえる犬の鳴き声。
実は鳴き声の変遷には想像しがたい理由があるのです。
猫の鳴き声、馬の鳴き声などはある程度知っていたので懐かしく感じました。
猫の鳴き声に関しては『源氏物語』で柏木が飼っていた猫の記述を思い出しましたし、馬に関しては大学の音韻論で必ず習う「いぶせくもあるか」の和歌が。
オノマトペを研究していると、日本語の発音が今と昔では大きく違ったという問題にも突き当たるのですね。
言葉というのは、太古の時代から変化を重ねて今にいたるわけです。
動物の声を聞くたび、日本語の音に関する変遷を思い出してみるのも楽しいものですよ。
◆記事を書いたのは・・・danngo
中高国語科教員免許を持つ、活字中毒気味のアラフォー。高学歴・高血糖・高齢出産の三高ライター。「家事は化学、子育ては文学」を信条としている。