好感度アップ?日本語のよくあるミスを国語教師が直します
国語科教員免許を持つ、現役高校教師のdanngoです。
ニュースで時々話題になる日本語の乱れ。
言葉が変化するのは当然ですが、違和感を覚える表現が多くあります。
場合によっては、悪い印象につながることも。
よくある間違いを言い換える方法をお教えします。
間違い1:とんでもございません
「とんでもない」を丁寧に言おうとしているのでしょうが、これは明らかな間違い。
「とんでもない」という語は1つの単語で、形容詞。
「とんでもなかろ‐う、とんでもなかっ‐た、とんでもなく、とんでものう、とんでもない、とんでもない‐こと、とんでもなけれ‐ば」と活用します。
「とんでもございません」という形にはならないのです。
「はしたない」「かたじけない」を「はしたございません」「かたじけございません」とは言いませんよね。
「とんでもない」の語が「とんで」「も」「ない」とわかれると勘違いし、「ない」の部分を否定と思って丁寧な否定の「ございません」に変換したのでしょう。
ところが、この「ない」は否定ではなく、強調。
「とんだ話」と「とんでもない話」が同じ意味であることから、それがわかるはず。
この場合、「とんでもないことでございます」と言い換えるのが良いです。
文法的に考えれば、「とんだことでございます」「とんでものうございます」も可能ですが、聞き慣れない表現かもしれません。
間違い2:~からお預かりします
品物の代金を支払う時によく言われる「~からお預かりします」という表現。
「1万円からお預かりします」と聞くと、「1万円という名前の人からお金を借りるのかしら」と私は思ってしまいます。
「預かる」は「金銭や物品を引き受けて保管する」の意味で、相手は人間や機関であることが普通。
「『私』という相手から、店側が『1万円』を預かる」わけであって、1万円から何かを預かるというのは不自然な言い方ですね。
誤りではないという考え方もあるそうですが、いらない言葉をあえて入れる必要もないと思います。
シンプルに「1万円、お預かりします」にした方が良いはずです。
間違い3:耳障りの良い
「耳障りの良い言葉」「耳障りの良い音楽」といった表現を、最近よく聞くようになりました。
「耳障り(みみざわり)」は、「聞いて嫌な感じがする」という意味。
「気に障る」という言い方にも使われる「障る」という言葉は、「障害となる」「さしつかえる」という意味を持っています。
「手触り」という言葉は「手で触った感じ」を示すため、「手触りが良い」と言うことができます。
この「手触り」と「耳障り」を類似表現と勘違いしたため起こった間違いなのでしょう。
「聞こえの良い言葉」「ひびきの良い音楽」などと言い換えたいところです。
他にもまだある!注意したい表現
実はまだ違和感のある表現がたくさんあります。
すごいおいしい
「すごいおいしい」「すごいきれい」、これらは文法的に間違い。
「すごい」は形容詞で、形容詞・形容動詞・動詞といった「用言」に接続する場合、「連用形」の「すごく」という形に活用します。
「すごくおいしい」「すごくきれいだ」というのが本来の言い方。
日常会話では気になりませんが、改まった場や手紙の文面で使うとカジュアルな雰囲気が出てしまうので避けるのが無難。
違くない?
「違う」は形容詞ではなく、五段活用の動詞です。
せめて「違わない?」と言ってほしいところ。
できれば「違わないか」「違っていないか」「違いませんか」といった表現がのぞましいです。
予定おありです?
美容院で、「この後予定おありです?」とよく聞かれます。
語尾を上げて疑問形にするのは間違いとはいえませんが、ぞんざいな印象を与えがち。
接客にはふさわしくないので、「予定おありですか」と丁寧に言ってもらいたいところです。
よろしかったでしょうか
今言ったばかりの注文を復唱した店員が「よろしかったでしょうか」と言うのは少し変ですね。
「過去形ということは、今はよろしくないのか」と、心の中で突っ込んでしまいます。
「よろしいですか」または「お間違えございませんか」のほうがいいでしょう。
~になります
「こちら、焼魚定食になります」と言われると、「今から焼魚定食になるってこと?」という疑念が。
「なる」には「変化する」という意味があるからです。
「焼魚定食でございます」が良いと思います。
細かいことを書いてしまいました。
全く気にならない人も多いと思うのですが、気になる人もいるものなのです。
できるところから気をつけてもらえるとうれしいです。
◆記事を書いたのは・・・danngo
中高国語科教員免許を持つ、活字中毒気味のアラフォー。高学歴・高血糖・高齢出産の三高ライター。「家事は化学、子育ては文学」を信条としている。