ライターという職業の使命について
こんにちは!サンキュ!STYLEライターの増田洋子です。フリーランスのライターとして日々の生計を立てています。
突然ですが、みなさんはライターという職業について、どのように説明をしますか?
おそらく「文章を書くこと」と答える人が多いと思いますし、それは間違ってはいません。
もし以前の私がその質問をされたら、きっと同じように答えたはず。
ですが最近、自分の仕事を見直す機会がありました。
仕事をしている最中に思うことがあり、ライターという仕事に対して今まで以上に使命感と喜びを感じるようになったのです。
本日はそう思うようになった経緯をお話ししたいと思います。
お前に食わせるタンメンはねぇ!
あるキュレーションメディアで執筆をしています。
コンビニや100円ショップの商品を購入し、その使用感や味の感想を書くというのが仕事の内容です。
ある日、私が食べたのは、コンビニのタンメン。
野菜が「ザクザク」していて美味しかったので、そのように書いて初稿を編集者に提出したところ、「ザクザク」が「シャキシャキ」に直されて返ってきたんですね。
あの野菜は絶っ!対っ!「ザクザク」なのっ!
それに「シャキシャキ」って生野菜っぽいじゃん!
食べていない編集者よりも、実際に食べた私の感覚の方が現実のものに近いはず。
「お前に食わせるタンメンはねぇ〜!」
と、歯をひん剥きながら心の中で叫び、「シャキシャキ」で入稿をしました。
納得がいくまで争うこともできるんですけど、Webメディアになるとやりとりはすべてインターネット経由。
一度も顔を合わせたことがない編集者も多く、折り合いをつけるのは非常に骨の折れる仕事です。
また公開のスピードを重視する傾向や、激安の単価を考えると「ザクザク」か「シャキシャキ」は瑣末なことでもあります。
つまりコミュニケーションが取りづらい状況にあり、かつそこまでのこだわりを求められていないのです。
こういった表現に対する見解の違い以外にも、不満の溜まることはあります。
明らかな誤りや、文章が洗練される場合は、自分の文章に修正が入っても何ら不満はありませんし、むしろありがたいと思っています。
しかし、好みによるところや、違和感を与えないような程度の語尾まで過剰に修正が入ると、
「もう絶対タンメン食わせてやらねぇからな!」
と思ってしまいます。いや、別にタンメンの紹介記事ではないんですけどね。
記名式の記事ではないので、ほかのライターの記事とのある程度の統一感は大切です。
もちろんキュレーションメディアを確認して、文章をなじませるようには心がけていますが……。
でも、なじませすぎた結果、
「あれ? これAIでもできるんじゃね? 私の文章ってなんだっけ?」
ってなるし、結局のところ理解不能な修正は入るし、だから修正を見るのも嫌になるし、公開された記事を確認したらなんやかんやで私の初稿通りになっている箇所もあるし、やる気もなくなるし、
「カクトハ……ブンショウヲカクトハイッタイ……?」
みたいにフリーズし、手ぐせでなんとか書くということしておりました。
あの役員の人にタンメンを食べさせてあげたい
どういったわけか(応募したからなんだけど)、独身なのにこの「サンキュ!スタイル」のライターになることができ、
「よっしゃ! 自分の好きなように書いてやるぜぇ〜」
と、まくった腕をぶん回していたのに、結局同じ書き方してるのよ……。
毎度記事を公開するたびに、自分自身にがっかりし、
「おめぇの文章はマジでクソつまらねぇ。もう二度とタンメン食うんじゃねぇぞ」
といった具合に自己嫌悪に陥いる日々。
己の書く意義を完全に見失っているように見える私ですが、いきいきとしているときもあります。
それはインタビューのお仕事をしているときです。
某新聞社のWeb媒体のお仕事で、経営者等にお話を聞き、記事にするというものです。
どちらかと言えば引き出すインタビュー力が大切であって、文章力はあんまいらないんですけど……(笑)
とあるサービスを提供している企業の役員の方にお話しを伺ったときのこと。
その方が自社のサービスを利用している方との交流を思い出し、涙を浮かべたのです。
その方の仕事に対する熱量を目の当たりにした私は、激しく心を打たれました。
私は36歳にもなってまだ、中高生時代に近いくらいの熱量で社会の不条理に対して怒りを抱ける人間です。
世にはびこる問題の根付いた深さと複雑に絶望し、未だ布団や机に突っ伏すことも。
そんな私にとって、その役員の方のいる会社の提供するサービスやご本人の人柄はとても魅力的で、世の中を照らす希望の光にも思えたのです。
その役員の方だけではありません。今までインタビューをしてきた方々はみんな、世のため人のために商品を開発したり、サービスを提供したりしているのです。
すべての社会問題の解決することはできなくでも、その商品やサービスを利用することで不満や不安を少しは是正したり、あるいはさらなる幸福感を得られたりする可能性があるわけです。
利用しなくても、多くの企業がより多くの消費者の幸福を考えているということを知れるだけでも、前向きな気持ちになれると思うのです。
「こんなにも多くの企業が個々の問題解決や消費者の幸福のために頑張っている……! 私は消費者に生きる希望を与えるために、企業の努力を伝えなければいけないっ!」
そう決意をし、目を真っ赤に腫らし、鼻水わすすりながら録音していたインタビューの文字起こしをするのでした。
タンメンの美味しさを届けるのが仕事
ライターの仕事は伝えること。
企業と消費者の両方が幸福になるために、より良い情報を正確に伝えることです。
「書く」というのはあくまでもその手段。
伝わるように書くということはずっと意識していましたが、強い使命感を持ったのは初めてでした。
コンビニのタンメンもそうなんですよね。
企業が一生懸命考えて作った商品の魅力を消費者に伝え、食べた消費者が「美味しい!」と笑顔になれるよう、繋ぐことがライターの仕事。
……でも、あのタンメンの野菜の歯応えは絶対に「ザクザク」だった!!(再燃)
悩んだらあのタンメンのザクザク感を思い出せ!
書いていて納得をいかないこともあります。
仕事だから自分勝手に書くわけにもいかず、折り合いをつけなければいけないことがあるのもわかっています。
ただ「伝えること」が一番大切だと心の底から気づけたときから、少しだけ気が楽になったきがします。
伝えることが一番となると、やっぱりあのタンメンの野菜は「ザクザク」なんだけど……まぁいいや。
たぶんこれからも書く上で迷うことはたくさんあるでしょう。
そんなときはライターの仕事がなんたるかを思い出したいと思います。
◆この記事を書いたのは・・・一人暮らし歴10周年目突入のフリーランスライター。紙、Webと媒体を問わず書いています。キュレーションメディアのライフスタイル系を始め、グルメメディア、エンタメ誌、企業タイアップ記事などを執筆。コーヒーとラーメンが大好き。