グリーフケア 予期悲嘆

「もうすぐ、じぃじが天国に行くかも」4歳の息子の心の準備に使ったモノ

2024/10/11
  • 知って活用、暮らしに溶け込む健康づくりをモットーに東洋医学のセルフケアの知恵を取り入れやすく続けやすいように発信します。看護師・薬膳師・などの資格をもつ令和元年生まれの坊やのママです もっと見る>>

看護師で薬膳師の薬膳ナースけいこです。

実は、83歳の私の父は、施設から病院へ頻繁に救急搬送されていた時期がありました。当時4歳だった息子は「もうすぐ、じぃじは天国に行くのではないか」という漠然とした不安を抱えていました。
近い将来、息子の不安が現実のものになりそうだと判断した私は、息子と一緒に「お別れの心の準備」をすることにしました。

じぃじと会えなくなるかもしれない…

グリーフケア 予期悲嘆

息子は、頻繁に救急搬送される祖父の様子を見て「もうすぐ、じぃじと会えなくなるかもしれない」と感じていました。

当時4歳だった息子にとって、初めて肉親との死別の予感を感じる日々でした。大人にとっても身近な肉親の死に対して、全てを受け止める事は難しいことだと思います。
4歳くらいの子どもは、「死と睡眠を混同しがち」「天国を○○県のような住所のように捉えることがある」と言われています。息子が無理なく理解できる範囲で会話を重ねていくことにしました。

道で死んでいる昆虫を見た時に「体がここにあるからまだ天国には行っていないみたい」と言うなど死に対して色々と捉え違いをしている点はありましたが、「年を取ってきたじぃじはだんだん動かなくなる」「天国という遠い所へ行ってしまう」「会いたい時に会えなくなる」と捉えているようでした。
中でも、「会えなくなる喪失感」を大きく感じているようでした。

もうすぐ、じぃじと会えなくなる…それは正しい予感だけど、会えなくなっても息子を愛してくれたこと、一緒に遊んで楽しかった思い出は残り続ける。
喪失するだけではなく、残り続ける物もあることを息子に伝えました。

絵本の力を借りてみた

グリーフケア 予期悲嘆

以前私はホスピスと呼ばれることもある、余命の限られた方が多く入院している病院で看護をしていました。その時に、もうじき大切な人と別れの時を迎える子どもさんのケアに絵本を活用したことがありました。

じぃじが天国に行って、失うものだけではない「残り続けるものもある」ことを息子がイメージしやすいように、絵本の力を借りることにしました。

【わすれられないおくりもの】
スーザン・バーレイ (著),小川 仁央 (翻訳) , 評論社(出版社)
賢くてみんなに頼りにされているアナグマさんが天国に旅立った後、周りの動物たちは悲しみますが、アナグマさんが残してくれたものに支えられて、楽しい思い出を語り合うシーンもあります。
病院で子どもさんのケアに活用していた本でしたので、読み聞かせてみましたが当時4歳の息子には少し難しかったようでした。大人が読んでも静かに大切な人の死と向き合う気持ちになれる本だと思います。

【ぶたばあちゃん】
マーガレット ワイルド (著), ロン ブルックス (イラスト), 今村 葦子 (翻訳), あすなろ書房(出版社)
孫娘と一緒に暮らしているおばあちゃんが、死を予感して最期に向けた支度を進めていきます。整理を進めるおばあちゃんと、孫が与えられ受け取り生きていくことが優しく描かれています。おばあちゃんと一緒に生活している子は、色々と感じる事のある絵本なのではないかと思います。

【けばけば】
北川 悠仁 (著), 村上 隆 (イラスト),Kaikai Kiki (出版社)
たくさんの色を持つ「けばけば」が困っている仲間たちに色をプレゼントします。みんな喜んで色を受け取りますが自分に色が無くなった「けばけば」は空に旅立ち、にこにこしながらみんなを見守っています。当時4歳だった息子にとっては、この本が1番「命が無くなると遠いところに行ってしまう。遠い所に行っても、残されたものを受け取って生きていく」ことをイメージできたようでした。

その後のじぃじとの時間

グリーフケア 予期悲嘆

救急搬送が頻繁だった父ですが、医療従事者の方のご尽力もあり、最近は体調も落ち着いてきて施設で穏やかに生活しています。

息子も5歳になり、時々じぃじに会いに行きます。自分の顔を見ると大喜びするじぃじの様子を見て愛されていることを実感しているようです。じぃじを失う不安を感じて、その時に色々と考えたからこそ、楽しく過ごせる今の時間を大切に想ってくれているように感じます。

そう遠くない未来に、お別れの時が来るかもしれない状況に変わりはありませんが、その時々で息子の気持ちに寄り添いながら会話を重ねて一緒に受け止めていきたいと思っています。

記事を書いたのは…薬膳ナースけいこ
看護師・薬膳師・経絡ヨガ指導者・薬膳茶エバンジェリストなど人の心身のケアに関わって25年
東洋医学、西洋医学、脳と心の仕組みを使って「大人女子の体と心の生命力がUPする」健康習慣をお伝えしています
プライベートでは、令和元年生まれの男の子の子育てに奮闘中です

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