【予報士解説】身を守るために知っておきたい!雷にまつわるウソ・ホント
- 気象予報士として講演・執筆を行うかたわら、野菜たっぷりの作り置き料理を代行する出張料理人としても活動中。野菜ソムリエ、食育インストラクター、薬膳マイスターなどの資格や、東北~関西まで各地に住んだ経験から、健康や美容にうれしい食材や、いざという時に備える災害食にも詳しい。 もっと見る>>
暑い日が増えるとともに多くなるのが、雷を伴う突然の夕立。
落雷の音を聞くと「今日は金属のアクセサリーをつけているから自分に落ちやすいかも」とか「まだ音が遠いから大丈夫かな」などと考える方もいると思いますが、その知識、本当にあっていますか?
今回は、気象予報士と料理人の2足のわらじを履くライター・植松愛実が、気になる「雷にまつわるウソ・ホント」を解説します!
雷は金属のものに落ちるってホント?
金属のものを身につけていると雷が落ちやすい、と聞いたことのある人は多いでしょうか。
しかしじつは、そんなことはありません。
金属を身につけていようといまいと、雷は同じ確率で落ちます。
「でも、傘をさしていると傘の金属の部分に落ちるはず」…そう思われるかもしれません。
これは、雷が「より高いところ」に落ちやすいから。
傘をさしていると普通の人よりてっぺんが高くなるので、傘の骨が金属だからではなく、純粋に高さの問題でそこに落ちるのです。
雷の光が見えてから音が聞こえるまで10秒以上あれば安全ってホント?
これもウソ。
かつて小学校の「速さ」の単元で、音速約340メートルで伝わる雷鳴と、ほぼ一瞬(秒速約30万キロ)で伝わる雷光の時間差を利用して落雷地点からの距離を求める問題を解いた記憶を持つ方は多いと思います。
この方法で計算すると、雷の光が見えてから音が聞こえるまで10秒かかった場合、自分のいる場所は落雷地点から約3.4キロ離れていることになります。
ところが…1つの積乱雲の大きさは、幅が10キロを超えることも。
つまり、たかだか数キロ離れている程度では、落雷地点と同一の積乱雲の真下に自分がいる可能性があるのです。
ちなみに、雷鳴の聞こえる範囲が約10キロですから、雷は「音が聞こえたらすでに危険」と思っておく必要があります。
雷が木から人に移るってホント?
これはホントです。
この記事の前半で「雷はより高いところに落ちる」と書きましたが、この性質により、人と木の両方が存在する場所では、より高い木のほうにまず雷が落ちます。
ところが、人の体は木と比べると電気を通しやすいため、雷が落ちた木のそばに人がいた場合、木から人に移るという現象が発生します。
これを「側撃雷」と言います。
木の下や木造建物の軒下で雨宿りをしていて死傷する事例は、ほとんどがこの「側撃雷」が原因。
雨が降っているときに木の下などで雨宿りすることは非常に危険です。
なお「側撃雷」を避けるために「高さ4m以上の構造物(木を含む)から4m以上離れて45度見上げる角度になる場所でしゃがむと安全」という説明をネットなどで見たことがある人もいると思いますが(これを「保護範囲」と言います)、一般の人が雷鳴とどろく最中に正確な距離を測るのは現実的ではないので、「木から離れる」ことを優先しましょう。
雷から身を守るために
雷雨の際、もっとも安全なのは丈夫な建物(プレハブやテントなどではない建物)の中に入ることです。
運動場やキャンプ場、海水浴場など開けた場所だと人間が「一番高いもの」になってしまい、人間に雷が落ちやすくなってしまうためです。
近くに建物がない場合は車の中へ避難しても構いませんが、非常に発達した積乱雲だと雷と同時に竜巻などの突風が発生することがあり、突風は車ごと巻き上げて飛ばしてしまうおそれがあるので、一時しのぎにしかなりません。
そのため、ニュースや天気予報などで「雷雨の可能性あり」と言われた日には、そもそも逃げられる建物がない場所へ行かないようにするのがおすすめです。
■この記事を書いたのは・・・サンキュ!STYLEライター植松愛実
本業の気象予報士と副業の料理人、2足のわらじを履く主婦。サンキュ!STYLEでは、身近な食材でできる時短作り置き料理やパーティー料理、簡単に彩りを増やせる料理のコツや、いざという時に備える災害食まで、「食」に関する情報を中心に発信。