避難指示が出たらどうする?「避難する=避難所へ行く」ではない!防災士解説

2023/07/11
  • 気象予報士として講演・執筆を行うかたわら、野菜たっぷりの作り置き料理を代行する出張料理人としても活動中。野菜ソムリエ、食育インストラクター、薬膳マイスターなどの資格や、東北~関西まで各地に住んだ経験から、健康や美容にうれしい食材や、いざという時に備える災害食にも詳しい。 もっと見る>>

ニュースで大雨災害の報道を見ると、「うちも避難指示が出たら早めに避難所へ行かないといけないなぁ」と思う人が多いかもしれません。
でも、自分自身が本当に避難所に行くべきなのか、知っていますか?
今回は、気象予報士・防災士の資格を持つライター・植松愛実が、「避難する=避難所へ行く」ではない理由を解説します!

「避難」って結局のところ何?

2014年8月、一晩で70人以上の命を奪った広島市の土砂災害現場。画面中央の空間にはもともと住宅があった。2015年4月に筆者撮影(サムネイル写真も同様)。(国土交通省の監督のもと安全等に配慮して撮影しています。)

「避難」とは、「災害から身を守るために行動をすること」です。

どんな行動が「避難」に該当するかというと、

①指定された避難所や避難場所(※)へ行くこと
②近所のより安全な場所へ行くこと
③自分のいる建物の中でより安全な場所へ移動すること

の3つです。
(※「避難所」は自宅で安全に暮らせるようになるまで滞在する施設、「避難場所」はひとまず安全確保をする場所(公園など屋根のない場所を含む)。大半の学校や公民館は避難所と避難場所を兼ねている。)

②の「近所のより安全な場所」には、親戚や知人の家、ホテルなどが含まれます。

③は「垂直避難」と呼ばれ、たとえば建物内のより高い階や、川や崖から離れた部屋が「より安全な場所」となります。
ただし後述のように、自分のいる建物自体が川や崖にかなり近い場合はどの部屋でも危険なため、垂直避難が有効な人は限られます。

そもそも家にいるほうが安全な人が多い

広島市の土砂災害現場から一級河川・太田川を見下ろす。治水工事が進む昭和後期までは太田川の氾濫が相次ぎ、山の斜面を切り崩して宅地開発を行うしかなかった。2015年4月に筆者撮影。(国土交通省の監督のもと安全等に配慮して撮影しています。)

日本では全世帯数の8割近くに当たる人が、大雨災害の危険性が比較的小さい場所に住んでいます。
にもかかわらず豪雨のたびに多くの被害者が出るということは、かなり多くの人が、家から出て被災しているということになります。

よくニュースで「川の様子を見に行って被災」といった報道を聞いて「自分はそんなことしない」と思っていても、実際には「このくらい大丈夫」と思って買い物に出た途中で被災したり、自宅と避難所のどちらがより安全かわからずにとりあえず避難所に向かう途中で被災したりする人がいるのです。

自宅の危険性はどうやって確認するの?

かつてハザードマップは町内会の回覧板に挟まれた冴えないプリントを見逃してしまったら拝むことができませんでしたが、今やネットで簡単に見ることができます。

「〇〇市 ハザードマップ」と自治体名を入れて検索してもいいですし、「重ねるハザードマップ」と検索すれば自治体関係なく全国のリスクをまるでスマホの地図アプリと同じように見ることができます。
(自治体ごとのハザードマップはPDFファイルであることが多いので、スマホで見る場合は「重ねるハザードマップ」がおすすめ。)

国土交通省が提供する「重ねるハザードマップ」を元に作成。

ハザードマップで土砂災害の危険があるとされている場所に家がある場合は、大雨のとき「そこにいてはいけない」ということになります。

土石流は建物の1階より高いところを襲うこともあるだけでなく建物を丸ごと押し流すことすらあるため2階以上にいても危険ですし、鉄筋コンクリートの建物でも窓を突き破って土砂が流れ込むことがあるためです。
(なお、土砂災害はリスクが表示されている範囲内できっちり収まるとは限らないため、念のためその周辺の住宅も同等に危険と考えるほうがおすすめです。)

画面中央右(ブルーシートの上)の屋根が壊れていることから、この高さまで土石流が襲ったことがわかる。2015年4月に広島市で筆者撮影。(国土交通省の監督のもと安全等に配慮して撮影しています。)

一方で、洪水の危険がある場所は、必ずしも逃げる必要がありません。
洪水によって浸水する高さよりも高い階にいればよいからです。

ただし、川のすぐ近くの場合はたとえ2階以上にいても建物ごと流されることがあるため、家にいるのは危険です。

平成30年7月豪雨(いわゆる西日本豪雨)で川の氾濫が発生した岡山県倉敷市。画面中央の青い重機の奥に見えている住宅は、丸ごと川の水に押し流されたもの。2019年4月に筆者撮影。(国土交通省の監督のもと安全等に配慮して撮影しています。)

なお、小さな川の場合はハザードマップが存在しないこともありますが、小さな川は(何キロも離れたところまで洪水が及ぶ大河川と違って)洪水被害が川の周辺に集中して起きやすいため、「川の近くほど危険」と考えましょう。

選択肢があるうちに行動を

2014年8月の豪雨災害による犠牲者を慰霊する石碑。2019年4月に広島市にて筆者撮影。

この記事の冒頭で「避難」に該当する行動は3種類あると書きましたが、この選択肢は当然ながら災害が切迫するにつれて時間とともに減っていきます。

もちろん選択肢が多い状態で行動するほうが「楽」なので、早めの避難行動は「より楽な防災」と言えるのです。
お子さんがいたり、ペットを飼っていたりする場合は特に、より楽な段階で行動を起こしましょう。

また、「家から出ない」という避難行動を取るためには、家に水や食料があることが前提になってきます。
自宅の場所の危険性が低い人ほど、備蓄の重要性は高くなるのです。

■この記事を書いたのは・・・サンキュ!STYLEライター植松愛実
本業の気象予報士と副業の料理人、2足のわらじを履く主婦。サンキュ!STYLEでは、身近な食材でできる時短作り置き料理やパーティー料理、簡単に彩りを増やせる料理のコツや、いざという時に備える災害食まで、「食」に関する情報を中心に発信。

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