雪山

暖冬なのになぜ雪崩に注意?少ない雪でも危険な理由とは⁇気象予報士解説

2024/01/08
  • 気象予報士として講演・執筆を行うかたわら、野菜たっぷりの作り置き料理を代行する出張料理人としても活動中。野菜ソムリエ、食育インストラクター、薬膳マイスターなどの資格や、東北~関西まで各地に住んだ経験から、健康や美容にうれしい食材や、いざという時に備える災害食にも詳しい。 もっと見る>>

雪崩と聞くと、たくさん雪が降って何メートルも積もった状態で起きる…そんなイメージを持つ人が多いかもしれません。
しかし実際には、そんなに何メートルもの積雪は必要ありませんし、むしろあまり雪が降らない暖冬の年こそ雪崩に注意が必要な場合すらあります。

今回は、気象予報士・防災士の資格を持つライター・植松愛実が、雪崩の意外な怖さを解説します。

たくさん積もってなくても…

雪の林

人的被害が出るような雪崩は、積雪何メートルくらいの場合に起きると思いますか?
1メートルでしょうか、2メートルでしょうか。

じつは、そもそも単位としてメートルを使うレベルではないのです。
筆者が東北地方に住んでいたとき、秋田県湯沢市で人が亡くなってしまった雪崩は、積雪約50センチの状態で起きました。

50センチと言えば、大人のひざ程度の高さ。
そのくらいの積雪でも、人の命を奪う威力があるのです。

「寒暖の差」の怖さ

雪景色

暖冬でも雪崩に注意、というのは、前述のように少ない積雪でも雪崩が起きるから…というだけではありません。
暖冬の年ならではの「寒暖の差」に注意が必要なのです。

通常の冬だと、冬期の数カ月間は比較的寒さが継続しやすく、雪が均一に積もりやすくなります。
一方で暖冬の場合、全体としては暖かい状態で一時的に寒気が入って雪が降るため、しっかり積もった雪の層と、半分融けたような雪の層が、ミルフィーユのように重なっていきます。

しっかりした雪の層と融けかかった雪の層の境目は、もろくて崩れやすくなります。
このため、ふだんの年ではあまり崩れないような場所でも雪崩が発生してしまうおそれがあるのです。

車でも逃げられない!

雪の壁

雪崩が斜面を流れ下る速度は、最大で時速200キロ。もはや新幹線に近い速さです。
遅いタイプの雪崩でも時速40キロくらいは出るので、たとえ車に乗っていたとしても逃げ切れません。

つまり、雪崩に遭遇してしまってからではもう遅い、ということ。

もともと雪国に住んでいる人であれば「この雪の斜面は危険そうだな」と事前に気づけることもあると思いますが、仕事や旅行で一時的に訪れる場合は、雪崩の危険を示す「融雪注意報」が気象庁から発表されているときは斜面に近づかないなど、あらかじめ用心する必要があります。

暖冬でも雪不足でも雪崩に注意

暖冬の年はどうしても雪による災害への注意が欠けがち。
ましてやニュースを見ていると雪不足で営業できないスキー場の現状が報道され、雪に関する災害が起きるイメージは持てないかもしれません。

しかし、暖冬でも、そして雪不足の年でも、雪によって命を奪われてしまうことがあります。
雪が降る地域に住んでいる人はもちろん、仕事や旅行で日本海側や北日本に向かう可能性のある人は、いつもの冬と同じくらい慎重に行動しましょう。

■この記事を書いたのは・・・サンキュ!STYLEライター植松愛実
本業の気象予報士と副業の料理人、2足のわらじを履く主婦。サンキュ!STYLEでは、誰かに教えたくなるお天気の豆知識や災害に備えるコツ、「食」に関する情報を中心に発信中。

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