冬の青空

「真冬並み」ってどういうこと?気温が何℃なら「真冬」⁇気象予報士が解説

2024/01/09
  • 気象予報士として講演・執筆を行うかたわら、野菜たっぷりの作り置き料理を代行する出張料理人としても活動中。野菜ソムリエ、食育インストラクター、薬膳マイスターなどの資格や、東北~関西まで各地に住んだ経験から、健康や美容にうれしい食材や、いざという時に備える災害食にも詳しい。 もっと見る>>

天気予報やニュースでよく「今日は真冬並みの寒さになりそうです」と言っているのを聞きますが、そういえば「真冬並み」って実際のところ「いつ並み」のことを言っているのでしょうか。
具体的に気温が何℃以下なら「真冬」になるのか、基準があるのでしょうか…?

今回は、気象予報士・防災士の資格を持つライター・植松愛実が、日々の生活に役立つ&誰かに教えたくなるお天気の豆知識を解説します。

そもそも「並み」は意外と深い表現

温度計

報道では「真冬並み」のほかにも、「1月上旬並み」や「3月下旬並み」のように、具体的な月や旬の入った表現を耳にすることがあります。
こういった表現はすべて、「平年値」と呼ばれるものを基準にしています。

「平年値」とは、直近30年間の平均のことで、気温の平年値、降水量の平年値、湿度の平年値…といった具合に、あらゆる気象データに関してそれぞれの「平年値」が存在します。
といっても30年分という膨大な量のデータを毎年計算するのは大変なので、平年値は10年ごとに更新すると決められています。

つまり、2024年現在で使われている「平年値」は、1991~2020年の30年間の平均。
そして2031年になったら、2001~2030年の30年間の平均に更新されます。

このように計算された「平年値」をもとにして、たとえば今日の気温が1月上旬の平年値に近ければ「1月上旬並みです」と表現されるわけです。

平均から大きく外れてしまうことも

矢印イメージ

通常の「~並み」の表現に使われる「平年値」は、その季節ごとの平均的な数字を示しています。
しかし実際には、平均から大きく外れた現象が起きることも。

たとえば今が3月だとして3月の平年値を大きく下回って2月頃の気温になる場合は「今日は3月だけど気温は2月並みです」といった表現が可能ですが…、もし1年でもっとも寒い時期の平年値すら下回ってしまったら、どうすればいいでしょうか。

ここで登場するのが「真冬並み」。
つまり「真冬並み」というのは、「1年でもっとも寒い時期の気温の平年値を下回っている」ということなのです。

「真冬並み」は何℃?

つらら

さきほどから説明している「平年値」は観測地点ごとに存在するので、ひとくちに「もっとも寒い時期の気温の平年値」といっても場所が違えば数字も違ってきます。
つまり「真冬並み」は場所ごとにオーダーメイドなのです。

たとえば東京都心では、1年でもっとも最低気温の平年値が低くなるのは1月中旬から下旬にかけてで、その数字は1.1℃。
一方、札幌の最低気温で見ると、1月下旬から2月上旬にかけての-6.9℃というのがもっとも低い平年値です。

そのため、最低気温に関しては東京都心なら1.1℃、札幌なら-6.9℃を下回ると「真冬並み」と表現されることに。
また、全国各地でそれぞれ真冬並みになる場合は、「今日は全国的に真冬並みの寒さのところが多い」ということになります。

オーダーメイドの「真冬並み」を活用しよう

「真冬並み」と呼ばれるような気温は前述のとおり場所によって異なりますが、もともと温暖な地域や都市部においては、最低気温が「真冬並み」ならだいたい路面が凍結しやすくなる寒さです。
一方、寒冷地で最低気温が「真冬並み」になるような場合、水道管が凍結するおそれがあるような冷え込みになります。

天気予報やニュースで風物詩のように使われる用語と思いきや、じつは有用な情報である「真冬並み」。
ぜひちょっとした情報を味方につけて、日々の生活に役立てていきましょう。

■この記事を書いたのは・・・サンキュ!STYLEライター植松愛実
本業の気象予報士と副業の料理人、2足のわらじを履く主婦。サンキュ!STYLEでは、誰かに教えたくなるお天気の豆知識や災害に備えるコツ、「食」に関する情報を中心に発信中。

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