彼女の手と母乳、赤ちゃんを持つお母さんの背景に母乳ボトル。マタニティと赤ちゃんのケア。

<防災>ストレスで母乳が止まるってホント?災害時の授乳・最新事情

2020/03/14
  • 2人の食べ盛り男子の母。子育て支援の現場で働きながら手抜き&時短のごはん作りを楽しんでいます。もっと見る>>

 こんにちは(^▽^)ベビーの頃の面影はどこへやら、の思春期男子二人の子育てに追われてるアラフィフ主婦、サンキュstyleライターのみい太です。

 3月11日…東日本大震災から9年となりました。最近は台風被害も続き、たびたび地震もあり…災害を「他人事ではない!」と感じている方も多いのではないかと思います。
 
 非常持ち出し袋を用意したり、家具を固定したり…ということはよく言われています。が、いざ災害時に弱い立場となる、アルファ米や乾パンなどの配給を食べられない「赤ちゃん」の準備はされていますか?
 災害にあったとき、赤ちゃんの命をつなぐ「母乳」「ミルク」は与えることができるのでしょうか。そのことを、最新の災害研究の情報をふまえてお話させてくださいませ。

ストレスで母乳が出なくなるって、本当?

 「災害時など、強いストレスがあると、母乳が出なくなる。」

 そんなことを聞いたことはないですか?
 …実は私自身も、ずっとそう思っていました。また、いろんな防災の本を読んでも「災害時に母乳が出なくなる場合にそなえてミルクの備蓄を!」とありました。なので、子育てひろばなどで行っている防災講座でも、「母乳が出なくなってもいいように、ミルクをあげる準備を必ずしておいて!」とお話してきたのです。

 …ですが。昨年の夏に受けた専門家の先生による講座で、私は衝撃の事実を知ったのです。

「ストレスで母乳が出なくなる、というのは本当ではありません!!」

 2017年に、WHOやUNICEF、そして世界的な人道支援団体から成る「IFEコアグループ」から出された
「災害時の乳児栄養についての国際ガイドライン」
があります。(正式名称は「災害時における乳幼児の栄養~災害救援スタッフと管理者のための活動の手引き2017」)
では、ストレスで母乳が出なくなることはない、として
「母乳を飲ませている人には母乳が続けられる支援を、乳児用ミルクは必要な人に必要十分な量が届くように(一律配布せず、必要かどうか確認して配給する)」
ことを挙げています。

 では、どうして「ストレスで母乳が止まる」という考えが一般的になったのでしょう?

 実は、こんなメカニズムが母乳にはあるのです!

 さかのぼること原始時代、危険が迫ったときに母乳を押し出すのを一時的に止め、安全になると出る仕組みができたと言われています。それは、
「今はゆっくり授乳している場合ではなく逃げろ!」
ということだからです。
 それは現代でも同じです。命の危機を感じるような状況では一時的に出が悪くなったとしても、安心するとまた母乳が押し出される仕組みになっているのです。

 …ですが、「母乳が出ない、きっとストレスで止まってしまったんだ、じゃあミルクに切り替えなきゃ」と、授乳をあきらめてしまうと…。
 実は、押し出す働きが一時的に止まっても、母乳を作る仕組みは働き続けています。授乳をやめてしまうことで、お母さんの乳腺炎の危険性が高まります!また、乳腺炎にならなかったとしても、授乳をやめることでせっかくの母乳を作りだす量も減ってきてしまい…本当に出なくなってしまうのです。

 このサイトでは、わかりやすいマンガでこのことを説明してくれてます。よかったら読んでみてください!

  

 

大切なのは、それぞれの母子に寄り添った支援!

 もし母乳を与えられるのだったら、やはり母乳のメリットはたくさんあります!

・母乳中の免疫物質は、災害時に心配な感染症から赤ちゃんを守ってくれます。
 (研究では、生後1年過ぎても免疫物質はさほど減りません。また、栄養も1~3割程度の減少にとどまるそうです。)
・不衛生な環境で衛生的なほ乳瓶などを用意するのが難しくても、母乳ならそのままあげて大丈夫!(基本的に、乳首周りには細菌の増殖を防ぐ分泌物が出て衛生を保っています)

 …そのようなお話をすると、
「じゃあミルク育児は悪いの?」
という話になりがちですよね…。いえ、そんなことはありません!
 出産後も働く女性が増えた現代では、子どもを保育園に預けるために、泣く泣く、それこそ辛い思いをして断乳し、ミルク育児に切り替えるママもたくさんいます。
 また、母乳の出は個人差があって当たり前。粉ミルクのない昔や地域では、母乳の出が悪いお母さんの子どもには、周りのママたちが代わりにお乳をあげることがあたりまえに行われているのです。何の引け目を感じる必要もないことなのです、本来は…。

 大切なのは。母乳がいい、ミルクがどう、ということではなく、
「すべての母子が、安心していつもどおりに授乳できる環境を用意すること」
であると、上記の国際基準では明記しています。

 母乳育児の人には、
「いつでも安心して母乳を与えられる場所」
があることが大切です。避難所で、周りに知らない人たちがいっぱいいる環境では、安心して母乳をあげられないですよね(涙)
 また、本当はママが食べていなくても母乳は母体にある栄養を使ってちゃんと作られるのですが…とはいえママの身体が弱ってしまったら授乳ができなくなるので(涙)しっかり多めに栄養と、特に水分をとってほしいです。

 ミルク育児の人にも、
「安心して授乳できる場所」
は必要です!特に、母乳がどうのミルクがどうのと、周りにいろいろと言われることのない環境にいたいですよね(笑)ですから、授乳専用の部屋が避難所には絶対に必要です!いちばんいいのは、乳児のいる家庭には個室や区切られたスペースを用意することです。
 
 また、ミルク育児では「衛生面」の管理がなにより重要になってきます。ただでさえ不衛生な災害時、水も殺菌する道具も足りない環境で衛生なほ乳瓶を用意するのは、とても難しい…でも、体力のない赤ちゃんが食あたりをしたら、命の危険さえあります。
 そこで、オススメなのが「コップ授乳」「スプーン授乳」です!

 コップやスプーンなら、使い捨てのものを使えばその都度消毒する必要がありません。
 コツは、コップでもスプーンでも、
「赤ちゃんの口に流し込む」
ことはNG!
「下唇にコップの端かスプーンを載せ、赤ちゃんが自分ですするのを待つ」
カンジです。災害時にいきなり行うのは難しいと思うので、ふだんから試しにやってみるとよいですね(^▽^)

液体ミルクは?

 昨年の4月から国内でも販売が解禁された「液体ミルク」。
「調乳する手間暇がいらず、そのまますぐ飲ませられる!」
のが何よりの魅力ですよね♪なので、災害の備えとして、乳児のいる家庭では備蓄をするとよい、という話もよく聞きます。

 その際に気をつけてほしいのが
「保存方法」
です!
 常温保存とありますが、その「常温」って何度だか知ってますか?
「5℃から25℃」(日本栄養士会ハンドブックより)
です!最近の日本では、真夏になれば30℃以上の暑さとなります。そんなときに常温に置いておいたら…傷んでしまうのです。なので、25℃以下になる冷暗所か、もしくは冷蔵庫での保存が必要です(冷凍は成分が分離するのでNG!)

 あと覚えておいてほしいのが
「開封後はすぐに飲ませ、飲み残したら廃棄」
ということです。開封して空気に触れたら、雑菌が入ったと考えるべき。

 このように保存管理に慎重を要するものなので、避難所となる学校や行政では、液体ミルクを備蓄しているところはなかなかないのが現状です。なので、ミルク育児の家庭では、自分で「ミルクと飲ませるための道具」を備蓄することが大切です。

まとめ

 母乳育児の親子も、ミルク育児の親子も、どちらも守るべき大切な存在です。
 母乳育児のお母さんが母乳をあげ続けられる支援をすることで、実はそのぶん、ミルクが必要な赤ちゃんにミルクがいきわたることになります。どちらにとっても助けになるのです。

 「安心していつもどおりの授乳ができる環境を」
これがとても重要な支援のポイントになりますが…今までの避難所運営では、なかなかその支援がいきわたりませんでした。
 なので!「誰かがなんとかしてくれる」ではなく、私たち母親が団結して
「授乳できる環境をください!」
と避難所運営に参加して伝えていくことが求められるのです。

 昨年の台風被害を考えれば、それは他人事ではありません。どうか、いざというときに、大切な小さな命を守れるように、私たちが備えておきましょう!

~読んでくださりありがとうございました~
**掲載の体験談は個人の感想です**
**参考文献…「災害と乳幼児栄養国際基準研究会」発行資料
       「災害時の母乳育児相談」災害時の母と子の育児支援共同特別委員会発行

■書いたのは…サンキュ!styleライター  みい太
大食漢のダンナさんと中2&小5の食べ盛り男子を満足させるのに悪戦苦闘!教員と保育士の資格を活かして子育て支援の現場で働きながら、手抜き&時短をモットーに日々のごはん作りを楽しんでいます。
元サンキュ!トップブロガー  公式サンキュグラマー 
子育て家庭防災トレーナーとして、子育てひろばなどで防災講座を開いています。

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