エコなだけじゃない!究極のトイレットペーパー:ゼロ・ウェイスト実践レポート①

2020/11/06
  • 美大卒のやりくりママ。関東在住・男女2児と夫の4人家族。55平米の狭小中古一戸建てをDIY中。もっと見る>>

関東在住のSTYLEライター堀江麻衣です。数か月前に読んだ「ゼロ・ウェイスト・ホーム」という本に衝撃を受けて、環境問題に関心を持つようになりました。本を読んだ後、「ごみを減らすチャレンジをしたい」という思いがむくむくと沸き上がり、少しずつ暮らしを変えています。ほったらかしだった市民農園に足繫く通って生ごみを堆肥化したり、専門店に容器を持ち込んでお肉やお米を量り売りで購入したりするようになりました。

ゼロ・ウェイストの壁:トイレットペーパー

私が衝撃を受けた「ゼロ・ウェイスト・ホーム」という本のタイトルにある「ゼロ・ウェイスト」とは、「ごみや無駄、浪費をなくす」という意味の言葉です。ごみを出さなければ、その処分にかかる費用もエネルギーも不要になり、環境への負担が少なくなるという考え方です。ごみの処分には大量の税金が使われているだけではなく、有害物質や温室効果ガスの排出など、様々な問題があるそうです。
この本に触発され、まずは容器を持ち込んで食品を買える専門店を探すようになりました。商品パッケージのように、すぐごみになってしまうものを避けるためです。お米屋さん、お肉屋さん、魚屋さん、コーヒー屋さん、お茶屋さんなど、持ち込み容器を受け入れてくれるお店は探すと意外にあるもので、こちらは好調な滑り出しでした。
その後、キッチンペーパーやトイレ掃除シート、生ごみネットなどの使い捨て製品の使用を、出来る限りやめるようにしました。代わりに布巾や雑巾を使用することで、こちらもそんなに難しさを感じることはなく移行できました。
こうしてゼロ・ウェイスト・チャレンジをしていると、あらゆる使い捨ての生活用品が気になってきます。その中でも特に気になったのが、トイレットペーパーの存在でした。トイレットペーパーは暮らしから排除することは難しいうえに、まぎれもなく使い捨て製品だからです。使用後は下水に流され、リサイクルされることはありません。
世界は広く、トイレへ行く際にトイレットペーパーを使わない国もあります。ただ、私にはトイレットペーパー無しで用を足す根性はありません…(インドを約1か月旅行したときですら、汲み置きしてある水をトイレットペーパーの代わりに使う勇気は無かった…)。インターネットで読んだゼロ・ウェイスト・チャレンジをされている方のブログでは、小の時は布で拭き、大のみトイレットペーパーを使用するという方もいらっしゃいました。でもやっぱり、小ですら布で拭く覚悟は私にはないのです。ぜひともトイレットペーパーは使いたい。使わせてください(涙)
トイレットペーパーはゼロ・ウェイストの壁である、と感じましたが、私には使うしか方法が(根性が)ないので、せっかく買うならば「環境負荷の低い、最善のトイレットペーパー」を選択したいと思うようになりました。

トイレットペーパーの思い出:こだわりからの脱出

再生紙のトイレットペーパーを買えば「森林伐採の量が減るので環境負荷が低い」そうなのですが、再生紙のトイレットペーパーに移行するのは少し抵抗がありました。私には、トイレットペーパーに対して小さなこだわりがあったからです。それは26歳のとき、オーストラリアでワーキングホリデーをしていたときの思い出と関係しています。私は姉と一緒にオーストラリアのパースにあるシェアハウスに住んでいたのですが、そこではトイレットペーパーは、自分で購入し管理するルールになっていました。限りある資金で長く海外に滞在するため、出費はできるだけ削り、トイレットペーパーは一番安い再生紙のものを使っていました。あるとき、トイレットペーパーを切らしてしまいました。近くにお店がなく、すぐに買いに行くことはできなかったので、シェアハウスのオーナーに事情を話して1ロール分けてもらうことにしました。快くオーナーがくれたそのトイレットペーパーを手にしたとき、衝撃が走ったのです。
(なんてやわらかいんだろう…!いつも私が使っている、ごわごわの再生紙のものとは全然違う!真っ白だけどお花が立体的に加工してあって、なんてかわいいんだ…!私もこんなトイレットペーパーをつかってみたい…)
後日スーパーでそのトイレットペーパーの値段を確認すると、私の使っているものの倍以上しました。
(今の自分には買えないけれど、将来は、絶対にこういう柔らかい、花柄のトイレットペーパーを使おう…)
と心に決めました。その後結婚し、自分の家庭を持ってからは、必ず花柄のトイレットペーパーを買っていました。節約に目覚め、ほかの費用を削っても、「割高でも、トイレットペーパーは花柄」というこだわりをずっと持っていたのです。オーストラリアのスーパーで、花柄のトイレットペーパーの値段を見て手を引っ込めた、あのちょっと切ない思い出がずっと心に残っていたからです。
このこだわりを脱出するのは、少し思い切りがいりました。でも、今回はワーキングホリデーに行っていたときのように「仕方なく再生紙」を選ぶのではなく、「自分の意志を持って再生紙」を選ぶのです。「ゼロ・ウェイスト・ホーム」で衝撃を受けてエコ1年生になった私は、とうとう「花柄のトイレットペーパー」のこだわりから脱出をすることに。いざ、「環境負荷の低い再生紙のトイレットペーパー」購入です。

ゼロ・ウェイスト・トイレットペーパー探し

初めはスーパーで再生紙のトイレットペーパーを購入しました。やや硬いけれど、そんなに気になるほどでもないし、価格も安いので節約に貢献してくれるのもありがたい。家族もトイレットペーパーが再生紙になったことを気にしている様子はありませんでした。こだわりを抜け出してしまえば、意外と簡単に再生紙のトイレットペーパーを受け入れることはできました。それまでトイレットペーパーの芯は普通ごみに入れていたのですが、雑がみとしてリサイクルに出すように。周りのパッケージも、プラ製容器包装として資源回収に出すようになり、一歩前進です。
ただ、もっとゼロ・ウェイストなトイレットペーパーが世の中にはあるのかもしれないという考えが、ふっと頭に浮かびました。再生紙100%で、芯のない、最後まで使えるトイレットペーパー。周りのパッケージも、再生が難しいというプラスチック製ではなく、再生しやすい紙の包装のものを探してみることにしました。
インターネットで「ゼロ・ウェイスト・トイレットペーパー」と検索してみると、いくつか情報がでてきました。そのなかで気になったのは2つ。一つ目は「業務用トイレットペーパー」を購入するというもの。「再生紙で芯なし、段ボール入り」というのがいくつかあって、通販ですぐに届くとのこと。段ボールはかなり高確率でリサイクルされているようですし(全国段ボール工業組合連合会HPより)、メーカーも種類も複数の中から選べるし、これはかなりよさそうだと思いました。
二つ目は、「共働学舎(きょうどうがくしゃ)」という社会福祉法人がつくっているというトイレットペーパーです。「再生紙で芯なし、段ボール入り(もしくはクラフト紙包装)」というのはほかの業務用トイレットペーパーと同じなのですが、いくつか大きく違う点がありました。
まず、原料の古紙に雑紙(ざつがみ)を使用しているというところ。これは新聞や段ボールと違い、雑誌や書類などの、再生のルートが少ない紙類だということです。そして、古紙を再生する際に塩素系の漂白剤を使用していないので、その分の環境負荷も低いということ。
さらに一番大きな特徴が、障害をもつ方々が働く社会福祉法人が製造しているという点です。
普通の業務用トイレットペーパーを通販で買ってもいいけれど、「共働学舎のトイレットペーパー」の方が付加価値が高いかもしれない・・・。詳しく調べてみると、なんと我が家から行ける距離にあるではありませんか・・・!共働学舎のホームページからも購入できるけれど、せっかく近いので実際に買いに行ってみることにしました。

共働学舎(きょうどうがくしゃ)へトイレットペーパーを買いに行ってみた

写真掲載の許可をいただいています。

共働学舎の敷地に入ると、目の前に大きな機械と、古紙の巨大ブロックがありました。国会議事堂などから集められた書類等、独自に古紙を回収し、この機械で固まりにしてから製紙工場へ運ぶということ。ふと、以前働いていた職場で大量の書類をその他のゴミと混ぜて、事業ごみとして捨てていたのを思い出しました。十分に再生できる紙だったはずですが、焼却処分されていた大量の書類。その頃は全く環境問題に意識が働いていなかったので、職場のゴミの行く末を気にしたこともありませんでした。使用済みコピー用紙などのオフィスペーパーの回収率は44.2%で、シュレッダーごみの回収率は59.1%だそうですが(古紙再生促進センターより)、すべての廃棄書類がこんな風にリサイクルの輪に確実に収まれば、森林伐採の必要性はぐっと低くなるのではと感じました。

書類や雑誌だけではなく、再生しづらいというシュレッダーごみも回収し、段ボールは段ボールだけのブロックにするとのことでした。共働学舎では古紙回収をし、この大きな塊へ圧縮して出荷しています。静岡県富士市にある製紙工場へ運ばれた古紙は、大きなロール状の再生紙となって再び共働学舎へ戻ってくるということです。

製紙工場から運ばれた再生紙のロールから、トイレットペーパーを作る機械がこちら。

トイレットペーパーの太さにに巻きなおしてから、下のカッターで裁断し、出荷するそうです。

こうした古紙回収、圧縮、トイレットペーパーへのまき直し、裁断、出荷等の仕事を、障害のある方々と職員の方々がともにしているということでした。
購入&見学に行った際は新型コロナ対策のために一般利用はできませんでしたが、障害のある方々が働くレストランもありました。トイレットペーパーだけではなく、廃油石鹸などの作成販売もされているとのこと。石鹸も購入してみましたが、泡立ちがよかったです。

芯なしトイレットペーパーの使い心地はいかに

共働学舎のトイレットペーパーには芯なし、芯ありと2種類あります。2つとも共働学舎で回収した古紙100%のものですが、肌触りや使い心地に若干違いがありました。芯なしはしっかりした触り心地で、ミシン目無し。芯ありはエンボス加工のやや柔らかい触り心地でミシン目あり。共働学舎で巻いているのは芯なしのほうだそうです。ゼロ・ウェイストの観点から、無駄の出ない芯なしを購入しました。
芯なしトイレットペーパーの価格は、130m巻きの32ロールの包みで1920円です。たまたま切断面がふぞろいのものがあったので、価格の安いそちらを私は購入しました。模造紙の包みにふぞろいの「ふ」と書いてあり、価格は1280円でした。

クラフトテープで止められた、模造紙の包みをあけると、32ロールぎっしり詰まっていました。ひとつがシングルの130m巻きなので、手に持つとずしっと重いです。大きさは普通のペーパーホルダーに入るサイズですが、一般的なものの約倍の長さなので、かなり持ちます。ペーパーを交換する頻度が半分になり、芯を処分する手間もなくなったのは、予定外のメリットでした。しっかりした手触りで若干硬いかな…?とも思いますが、使ってみるとそんなに気になりませんでした。私の選んだ「芯なし」は「ミシン目なし」なので、トイレットペーパーホルダーによっては、上手くカットするのが少し難しいかもしれません。我が家のホルダーは、抑える部分が丸みがかった木でできているので、上手く切るのに慣れるまで、時間が必要でした。一緒に購入した姉の家のホルダーはギザギザのついたプラスチック製なので、まったく問題なく切れるということ。また、ウォシュレットでも問題なくつかえるとのことです。

ゼロ・ウェイストと福祉に同時に参加できる究極のトイレットペーパー

「ゼロ・ウェイスト・ホーム」いう本でインパクトの強かった言葉の一つに、「お金を渡すということは、究極的には『あなたのお店は私のニーズを完全に満たすので、もっと繁盛してください』というメッセージを言外に含むことになる」(p75)というものがありました。「製品を購入することは、そのお店やメーカーに一票を投じることである」というのは、初めて知った考え方でした。これまでは「ものを買う」という行動の、そこまで深い意味を考えたことはありませんでした。
今回、共働学舎へ直接トイレットペーパーを購入しに行き、見学もさせていただきました。古紙回収から製品になるまでの流れを知り、役目を終えた紙類が、新たな製品に生まれ変わる様子を目の当たりにしたのです。共働学舎のこのトイレットペーパーは、原料に再生ルートの少ない「雑古紙」を使っている点、塩素漂白を行わない点など、一般的な「再生紙のトイレットペーパー」よりさらに環境負荷が低いと感じました。
ただ、それよりももっと印象深かったのは、そこで働く方々にお会いしたことです。「障害者が自立し自分の職業を持つこと」を目的としている(共働学舎HPより)、障害のある方々と職員の方々がともに働く場なのです。ここで作られたトイレットペーパーやその他の製品の売り上げが、障害をもつ方々の工賃になるとのこと。「働いて生きる」ということ、障害があっても働けるということ、これは、これからの世の中に本当に必要なことなのではないだろうか、と思いました。私は身内に障害のある人がいるので、こういう志を持つ施設を応援したいという個人的な心情もあります。働く場があるというのは、自分を必要とする場があるということだと思うのです。私の一票をこの「ゼロ・ウェイストと福祉に同時に参加できる」トイレットペーパーに投じたいと思い、継続して買うことに決めました。
共働学舎のホームページに、施設の紹介や理念、トイレットペーパー製造の説明が詳しく載っています。興味が湧いた方がいらっしゃれば嬉しいです。

リンク貼り付けの許可をいただいています。

この記事を書いたのは・・・堀江麻衣
口コミサンキュ!ではトップブロガーとしてブログを執筆。55㎡の狭小中古1戸建てをDIYしながら暮らす専業主婦で、小3の男の子と3歳の女の子の2児の母。多摩美術大学で陶芸を4年間専攻。美大卒業後は、12年間学習塾で英語と国語を教えていました。

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