「なごり雪」はいつまで降るの?今までで一番遅かった雪は⁇春の雪の注意点を気象予報士が解説
- 気象予報士として講演・執筆を行うかたわら、野菜たっぷりの作り置き料理を代行する出張料理人としても活動中。野菜ソムリエ、食育インストラクター、薬膳マイスターなどの資格や、東北~関西まで各地に住んだ経験から、健康や美容にうれしい食材や、いざという時に備える災害食にも詳しい。 もっと見る>>
卒業・入学シーズンには「♪なごり雪も降る時を知り~」というあの名曲がよく流れますが、そういえば雪って何月まで降る可能性があるのでしょうか。
じつは東京都心でも、皆さんが思っているよりも雪が降る期間は長いのです。
今回は、気象予報士・防災士の資格を持つライター・植松愛実が、春の雪の意外な一面と、春だからこそ気をつけたいポイントを解説します。
今までで一番遅かった雪の日は
東京都心で観測史上、もっとも遅く雪が降ったのは4月17日。
なんと4月も中旬に入ってから降った記録があるのです。
「きっと大昔の、まだ温暖化や都市化が進んでいない時代の話でしょ?」と思うかもしれませんが…、じつは4月17日に雪が降った記録は3回もあって、1967年と1969年と2010年。けっこう最近にもあるのです。
また2010年ほど遅い記録ではないものの、2015年にも4月8日に雪が降っていて、4月の雪は「あり得ない」レベルではありません。
東京で雪の可能性がある期間は、意外と長いのです。
ちなみに北海道では5月にも雪が降ることがめずらしくなく、札幌では5月25日、網走ではなんと6月8日に雪が降った記録があります。
春の雪は冬の雪とどう違う?
春の雪は、とくに太平洋側で降る量が多くなるおそれがあります。
というのも、太平洋側での雪は低気圧が原因になることが多いのですが、低気圧は冬の間よりも春になってからのほうが発達しやすいからです。
そのため、冬の間とは異なる場所で被害が大きくなることがあります。
また、日本海側で降る場合も含め、湿った重たい雪になる傾向も。
とくに日本海側では冬の間、乾いたサラサラの雪が降りやすいのが、春先からは水分の多いべちゃっとした雪になることが多くなっていきます。
湿った重たい雪は木に積もることで木が倒れて停電や集落の孤立につながったり、電線に付着することで停電を引き起こすことも。
雪が単純に積もるだけでなく、複合的な災害につながりやすいのです。
雪への備えが甘い場合も
冬に雪が降る場合、道路を走る車は冬タイヤを装着していることが多く、そうでない車もチェーンを積んでいることが多いはず。
一方で、春になってから雪が降る場合、すでに冬タイヤから夏タイヤ(通常のタイヤ)に交換してしまったあとだったり、チェーンも積んでいなかったりして、雪に対応できない車が多く道路を走ってる可能性があります。
自分が運転する場合も、そして道路脇を歩く場合も、いつも以上に注意が必要です。
「なごり雪」には別の意味も
辞書で「なごり雪」を引くと、春になってから降る雪という意味のほかに、春になっても残っている積雪という意味もあります。
とくに北陸・甲信の山沿いや北日本では、4月になっても雪が残っているところが多いですが、春は積雪の意味での「なごり雪」にも注意が必要。
気温が上がる時期にはだんだん地面の温度も上がってくるため、積雪が地面と接している部分で溶けやすくなり、積雪の層が丸ごと崩れる「全層雪崩」が起きやすいのです。
もともと積雪の多い場所に住んでいる人は毎年気をつけているとは思いますが、春のレジャーで山沿いに行く人はとくに注意をして、行き先の地域に「なだれ注意報」が出ていないかなど情報に気をつけましょう。
■この記事を書いたのは・・・サンキュ!STYLEライター植松愛実
本業の気象予報士と副業の料理人、2足のわらじを履く主婦。サンキュ!STYLEでは、誰かに教えたくなるお天気の豆知識や災害に備えるコツ、「食」に関する情報を中心に発信中。