加藤亮/中村洋子展 「brackish water」ー 横浜の港を臨む「象の鼻テラス」でアートと向き合う

2023/02/11
  • 美大卒のやりくりママ。関東在住・男女2児と夫の4人家族。55平米の狭小中古一戸建てをDIY中。もっと見る>>

みなさまこんにちは、美術大学出身のSTYLEライター堀江麻衣です。現在開催中の「brackish water」(ブラキッシュウォーター)という、中村洋子さんと加藤亮さんの展示を見に行ってまいりました。本日の記事では 神奈川県の港町、横浜でのアート展示の模様をお届けします。

展示詳細
ZOU-NO-HANA GALLERY SERIES vol.8
加藤亮/中村洋子展 「brackish water」
開催日時: 2023年1月24日(火)〜2月13日 (月)10:00-18:00 *開館時間に準じます。
会場: 象の鼻テラス
アーティスト: 加藤亮、中村洋子
主催: 象の鼻テラス

展示タイトル「brackish water」(ブラキッシュウォーター)とは

出展作家の中村洋子さんにご連絡をいただいて向かったのは、港町・横浜。
今回の展示のタイトルは「brackish water」(読みはブラキッシュウォーター)、汽水という意味です。
展示の基になる考え、コンセプトのところには以下の記載が。

【汽水:河川の河口など海水と淡水が混合する塩水。
 彫刻と工芸を行き来する作家、加藤亮と中村洋子による2回目となる2人展。
 象の鼻テラスは海と陸との境界を臨むところにある。
 その施設内に水平線/地平線/生活空間の混じり合う中間域を生成する。  】

展示タイトル「brackish water」(汽水)とは、河口付近など海水と淡水が入り混じった塩水のこと。
展示場所である象の鼻テラスは、横浜の海を臨む建物です。
展示を訪れた日は気持ちの良い快晴で、建物の目の前には横浜の海と青い空が広がっていました。

「海と陸との境界」、陸と海が接する場所を臨む象の鼻テラスでの展示。
水平線/地平線/生活空間の「混じり合う」様子が、展示タイトル「brackish water」の意味するところのようです。
今回の展示を鑑賞するうえで、駅から続く道やビル群、建物の前の芝生や目の前に横たわる横浜港など、作品と周囲の環境は切り離せないと感じました。

象の鼻テラスとは

展示場所の「象の鼻テラス」というのは横浜港・象の鼻パーク内の、無料休憩所です。
前面には横浜赤レンガ倉庫や大さん橋が見え、背後には横浜のおおきなビルが。
こちらが象の鼻テラスです。

ぐるりとガラス張りの、1階建ての建物。
中に入ってみると外から陽がさしこみ、明るい空間です。目の前には横浜港が見えました。

いざ 「brackish water」へ

建物の中に入り、どきどきしながら作品を探すと…ありました!

手前の黒い作品が加藤亮さんの作品で、奥の金属メッシュの作品が中村洋子さんの作品です。お二人での展示は今回が2回目。1回目のHouse on the seaも拝見させていただき、レポートブログを書きました。すごく印象に残っている展示で、海中で沸き起こる空気の流れのようなものを感じたのを、まだ覚えています。非日常感もありましたし、単純に「いいな」と感じた展示でした。その時のレポートブログのリンクを貼っておきます。

今回の中村洋子さんの作品は、大きな壁面に寄り添う形で取り付けられた立体作品。
金属メッシュに炎で焼き付けをして表情を出してあります。
ふわふわ くしゅ という擬態語が思い浮かびますが

じーっと見ているとそれぞれのかたまりが意思をもってうごめいて、寄り集まっているようにも見えてきます。

金属メッシュは、平らで冷たい無機物ですが、中村洋子さんの手を介して生命体に変えられた、という感じです。

加藤亮さんは「展示する場所に既にある家具等を別の事柄を加え再構築し、日常と物語が交差する制作を展開している。」とのことで、作品の台になっているのは、象の鼻テラスにあるテーブルです。テーブルのサイズをぎりぎりオーバーした黒い円柱。もともとあるテーブルの上に何げなく佇んで、存在感を消しているかのように見せながら、でも確かに感じる違和感。「あれ、これはなんだろう」と徐々に意識が向かう感覚、それが、「混ざりあう」”brackish water”を現わしているのかなと感じました。

作品前の椅子に座り、作品を眺めながら「アートっていったい何だろう…」と考えていました。太古から世界中で芸術活動はありますし、人間の根本的な欲求の一つだとは思います。こうして作家が何かを考え、自分の意思を目に見える形に残そうとしたもの。そして観る方も何かを考え、受け取り、そこに作家&作品と鑑賞者のやり取りが生まれる。そのぶつかり合いが、アートというものなのかもしれない…。
な~んて作品を眺めながら一人でブツブツ考えていました。

あ、そうだそうだ。せっかくだからコーヒーを飲もう、と思い出して、入り口付近のカフェに移動。

コーヒーや各種ジュースにお酒、カレーにナンピザ、ソフトクリームといろいろありました。
私はホットカフェオレを注文。
海の見える明るい空間でカフェオレを飲みながらアートと向き合うって、なんて贅沢な時間だろう、と思いました。

私がアート鑑賞をするときに指針としている言葉があります。
岡本太郎著 「今日の芸術」にあったこんな一節です。
《 「わからない」ことを心配することはない。「いい」と思った分量だけ、わかったということ。
答えを当てるために見るわけではない。その場に引きつけられている、何かを感じているということ。
自分自身で率直に見て、何かを発見できればその人にとって価値だ。》
という内容です。
これを読んでから、分からないことを心配しなくなりました。謎解きじゃないから、答えが分からなくてもいいのだと。

中村洋子さんの作品の、ふわふわしているのにみちみちしている感じ(擬態語ですみません)が好きだし、空気をはらんだ浮遊感も好きです。

金属メッシュにしてもいろんな素材があるんだなとか

焼き付けをもししていなかったら、ずいぶんあっさりした表情だろうな、やっぱり焼き付けがいいなとか

何を考えながら作ったんだろうか、何を伝えたいんだろうかとか

この角度からが一番胸にグッとくるなとか

「brackish water」の「混ざり合う」というところは、正面からみた作品の形、うごめくような形態で現わしているのかなとか

一人でぐるぐる考えていました。

もしかしたら作家さんにとっては的外れな感想かもしれないけれど、今の私はそう感じました。
そうやって考えている時間も楽しかったです。
この場にいられて良かったと思いました。

開催日時は2023年1月24日(火)〜2月13日 (月)10:00-18:00なのであと10日ほどです。
ぜひ横浜でのアート鑑賞に足を運んでいただければと思います。

*すべての写真は撮影と掲載の許可を得ています。

この記事を書いたのは・・・堀江麻衣
口コミサンキュ!ではトップブロガーとしてブログを執筆。55㎡の狭小中古1戸建てをDIYしながら暮らす専業主婦で、小5の男の子と5歳の女の子の2児の母。多摩美術大学で陶芸を4年間専攻。美大卒業後は、12年間学習塾で英語と国語を教えていました。

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