2017/04/12 07:06

新年度を迎え、本格的に勉強が始まりますね。

以前から少しずつ書いている、古文関連の記事をそろそろまた掲載したいと思います。

中学生以上の子どもがいる母親向けです。

前回の記事はこちら。

【技法を制する者は和歌を制す】
http://39.benesse.ne.jp/blog/2259/archive/149

和歌について出題がある場合、そのほとんどが技法関係の問題だということをこの記事で書きました。

しかし、ごくまれに技法のない和歌も出題されます。

というわけで、今回のテーマはこちら。


【技法のない和歌は言外の意味を読め】

技法のない和歌は、出題者泣かせです。

「現代語訳しなさい」くらいしか出題方法が見つかりません。

私の学校教師時代、一番悩まされたのはこの和歌でした。

月やあらぬ 春は昔の 春ならぬ 我が身ひとつは もとの身にして

『伊勢物語』の中にある有名な和歌です。

直訳すると「月はないのか。春は昔の春ではないのか。私の身一つは元のままの身でいて」くらいの意味になるのですが、何が言いたいのかさっぱり分かりませんね。

物語本文を読むと、まず通っていた女が簡単には行くことのできない場所に移って会えなくなってしまったということが書かれています。

そして丸1年経ってから、その女が住んでいた家に行き歌を詠んだのです。

この歌は、昔交際していた女に会えなくなってからちょうど1年が過ぎ、女のいなくなった家に行って嘆きながら詠んだという前提があってやっと意味が分かる歌です。

物語本文中には「立ちて見、ゐて見、見れど、去年に似るべくもあらず」という文があり、家の様子がすっかり変わったことが書かれています。

このことから、「月やあらぬ春や昔の春ならぬ」は反語ではなく疑問で訳すと考えましょう。

反語で訳すと「月も春も昔のまま」という意味になり、本文の意味と矛盾してしまうのです。

ちなみに、「あらぬ」という言葉には「そうではない」という意味もあるため、「月やあらぬ」は厳密に言うと「月は昔のままの月ではないのか」くらいの意味になります。

こういった歌は、ただ単に直訳させるのではなく作者の心情が分かるよう意訳させるような問題が出題されることが多いです。

問題文としてよくあるパターンは、「この和歌を作者の心情がよく分かるよう補って訳しなさい」というもの。

この和歌の場合は、「月は昔のままの月ではないのか。春は昔のままの春ではないのか。愛する人を失った今、私の身一つが昔のままであって、他のもの全ては変わってしまったように感じられる」などと訳せば正解となるでしょう。

しかしながら、この和歌を教えた学年は中学3年生だったので少し難しいかと思い、当時の私は悩んだ末に選択問題にしたのを覚えています(優しいな私)。

もう1つ、例を挙げましょう。

とどめおきて 誰をあはれと 思ふらん 子はまさるらん 子はまさりけり

『後拾遺和歌集』五六八番の、和泉式部の和歌です。

直訳すると、「残しておいて誰をしみじみとかわいそうに思っているだろう。子どもが勝っているだろう、子どもが勝っていることだ」…やはり意味が釈然としません。

歌集の中にある歌を解釈する時に大きな鍵となるのは、「詞書(ことばがき)」というものです。

和歌の前に書かれている短い文章で、和歌が詠まれた状況を説明します(ない場合もあります)。

こちらの和歌の詞書には、小式部内侍が死に、和泉式部の孫達(小式部内侍の子)がいるのを見て詠んだ歌とあります。

小式部内侍は和泉式部の娘で、出産により若くして命を落とします。

この歌は、和泉式部が小式部内侍の死を悼んで詠んだ歌なのです。

そうなると、「子はまさるらん子はまさりけり」と似たような繰り返しで分かりづらい部分が解釈できます。

先にある「子」は小式部内侍の子、後の「子」は和泉式部の子、つまり小式部内侍。

最後の「けり」は今まで気付かなかったことにふと気付いた、というニュアンスを持ちますので、この和歌全体を意訳すると以下のようになります。

死んでしまった娘は、この世に残しておいた人達の中で一体誰をしみじみとかわいそうに思っていることだろう。やはり自分の子どもを残して先立った悲しみが私に対する悲しみより勝っているのだろう。私だって、娘を失った悲しみが他の何よりもつらいと思ったのだから」

難解ですが、意味が分かると何とも切ない歌です。

詞書は基本的に短いですが、先に紹介した『伊勢物語』の和歌は『古今和歌集』の中にもあり、そこでは和歌の5〜6倍ほどの長さの詞書がついています。

こういった例はまれですが、詞書は長い方がありがたいです。

難解な和歌が出題されるときは必ずと言っていいほど詞書がセットになっているので、まずは詞書をよく読むように指導してあげてください。

詞書は短くても大切なことが書かれていますので、気付かずに読み飛ばすと大きな痛手となってしまいます。

今回の内容は、少し難しかったですね。

やはり、技法のない和歌は出題者にとっても回答者にとっても厄介なものなのです。


danngoさんのファンになる
この記事をみんなに教える
  • ごはん
  • おうち
  • ハンドメイド
  • やりくり&懸賞
  • 健康&ダイエット
  • ビューティー&ファッション
  • おでかけ
  • お買いもの
  • 子育て&家族の話
  • あれこれ
コメント(0)