2017/10/14 09:59
私が古文教師時代を思い出しながら時々書いている「我が子を古文嫌いにさせないために」のシリーズ。


中高生のお母さん方向けの記事で、お子さんが古文嫌だとかぼやいていたら参考にさせてあげてください、くらいの気持ちで始めましたが。

意外なことに、大人のブロガーさんから「面白い」と言われる機会が増えてきました。

複数コメントをいただいた前回の記事は、こちらです。

【古文単語の意味は100語覚えれば十分】
https://39.benesse.ne.jp/blog/2259/archive/309

単語帳の出版社さんに怒られそうな記事でしたが。

私の古文の教え方は、「最小限の労力で及第点以上を取らせる」ことを主な目的にしていましたので(古文が得意な生徒が少なかっため)、これで良いのだと思っています。

また近いうちにこのシリーズを書きたいなあとは思っていましたが、構想を練るのに時間がかかり遅くなってしまいました。

前回、覚える単語を極力少なくする方法を書きましたが、単語力が足りなければ読解で苦労するだろうと言われかねませんね。

そこで、今回は読解問題を素早く解くためのテクニックについて書こうと思います。


【読解問題はシステマティックに解く】

なぜか、古文の読解問題を解くには独特の感性や表現力が必要だと思っている人がいます。

「小さい頃から本を読んでいないから古文の読解が苦手」なんて会話を聞くことがあるのですが、現代文の小説ならまだしも古文には通常、感性などの特別な能力は必要ありません。

古文のテストの時試験監督をしていると、ひたすら本文と問題文をにらめつけながらじっとしている生徒の姿をよく目にします。

はっきり言って、手を全く動かさずに頭をフル回転させているだけでは無駄に時間を浪費してしまいます。

そして本文が難解なほど、読めば読むほど訳が分からなくなって泥沼にはまってしまうのです。

まず、古文の問題を解く時に本文を先に読むか問題文を先に読むかでも効率は変わってしまうと考えられます。

私のおすすめは、問題文を先にざっと読んでから本文を読む方法。

問題文を読むのにかかる時間は(よほど問題が多くない限り)数十秒程度です。

この数十秒で本文のどのあたりを重点的に読むべきか見当がつくので、やらない手はありません。

そして、本文を読む時には3つのポイントをチェックしましょう。

具体例がないと分かりづらいので、有名な『源氏物語』の序文が本文に出てきたとします。

「いづれの御時にか、女御、更衣、あまたさぶらひたまひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。」というやつです。

ざっくり現代語訳すると、「いつの天皇の御代であったか、女御や更衣がたくさんお仕えしていらっしゃった中に、とても高貴な身分ではない人で、とりわけ寵愛されていらっしゃった人がいた。」という感じ。

授業で丸暗記させられた方が多いでしょうが、『源氏物語』の文章は難解なものが多く、一文一文が非常に長いです。

私もこの一文しか覚えておりません(もっと頑張れよ…)。

ではまずポイント1。

注釈を読むことが非常に大切です。

学校の定期テストではあまり見られませはんが、模試や問題集の問題をよく見ると本文中にいくつかの注釈がついていることが多いです。

小さい字で狭いところに書かれているため、気付かずに見落としたり面倒くさくなったりして読まない生徒が数多くいました。

ところが、この注釈を読んでいないと問題を正確に解けないというケースがよくあるのです。

そもそも、なぜ出題者がわざわざ注釈をつけるか分かりますか?

本文の一部に難しいところがあって注釈をつけないと問題が解けないから、です。

生徒の大半が解けない問題を出してしまっては出題者も困るので、考えるヒントとして注釈を書いているわけです。

注釈ってどんなもの?と聞かれそうなので、画像をのせておきましょう。

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このように、本文の左側に小さく書かれます。

該当する本文のすぐ左に書くケースもありますが、本文をまとめて書いた後、その左に注釈をひとまとめにして書くケースもかなり多いです。

こちらの注釈は私が適当に考えて書いたので文章が下手ですが、ここに注釈がある意図は何でしょうか。

「女御」と「更衣」は天皇の妻であるということ、「更衣」は「女御」より身分が低いということに気付いてほしかったのです。

平安時代の有職故実に詳しくない限り、「女御」ならまだしも「更衣」が天皇の妻だということを生徒が知っている可能性は低いと考えられます。

「更衣って何だろう、更衣室の更衣?」などと悩んでしまうかもしれませんし、「女御って、女性のことを丁寧に言ったのかな」なんて勘違いもありがち。

古文には主語が省略されるケースが非常に多いため、登場人物を正確に把握することが勝敗を分けます。

なので、人物を表す語で分かりにくいものには大抵注釈がついています。

そして、敬語がつく人物とつかない人物を見分ける必要も出てくるので、身分にも触れてあるのです。

こういった例の他に、分かりにくい文章をほぼ丸ごと現代語訳してくれている注釈も時々見かけます。

見ない手はありませんよね。

ポイント2。

敬語には全て印をつけましょう。

敬語には尊敬語、謙譲語、丁寧語の3種類があるので、いづれであるか分かるように書くことが大事です。

「尊」などと漢字で書いても良いのですが、試験はスピードが命、「S」などと頭文字のアルファベットで書いても構いません。

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「さぶらふ」は「お仕えする」という謙譲語なので「K」、「たまふ」は尊敬の補助動詞(別の動詞にくっついて尊敬の意味を加える)なので「S」と書きます。

先程の注釈により主語が「女御、更衣」であることは目星がつくので、「たまふ」の方は女御と更衣の人々に対する尊敬語だと分かります。

さらに「さぶらふ」という謙譲語を使っているので、女御や更衣がお仕えする相手(おそらくとても身分の高い人)が存在することが分かります。

その相手は誰かと考えると、注釈の中に書いてある「天皇」が候補にあがるでしょう。

本文中に書かれていない天皇の存在に気付くには、敬語に注目することが必要だということになります。

最後に、ポイント3。

形容詞、形容動詞、動詞などには、良い意味を持つ単語と悪い意味を持つ単語、良い意味と悪い意味の両方がある単語があります。

こういう単語を片っ端から見つけて、良い意味には「+」、悪い意味には「−」、両方の意味がある時は「±」をつけていきましょう。

こうすることによって、本文全体を俯瞰した時に良いことが書かれている部分、悪いことが書かれている部分を大雑把に把握することができます。

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「やむごとなし(高貴な)」、「すぐる」、「時めく(時流に乗って栄える、寵愛を受ける)」この3つは全てプラスの意味の単語です。

文章中で、プラスの単語とマイナスの単語が交互に出てくることはまれ(ただし、打ち消しの助動詞「ず」には気をつけてください。これが直後につくと単語の意味が逆になります)。

つまり、分からない単語があった場合、その近くの単語がプラスの意味かマイナスの意味かによってある程度意味を類推できます。

この部分の場合、「時めく」の意味が分からなかったとしてもその前にプラスの意味の単語が続いているので、「これは良い意味の単語のはず」と分かるのです。

学生時代に「文脈で判断して」なんてことを先生に言われた経験がある人は多いと思いますが、それは文の前後をよく読んで曖昧な部分を補えということ。

そのために効果的なのが、このプラスマイナス法なのです。

『源氏物語』の冒頭部分は天皇に寵愛された桐壺更衣と呼ばれる女性が他の女性からの嫉妬を受けて苦しむさまが書かれているのですが、そこには「めざまし」という単語が登場します。

「意外だ」という意味があり、良いことにも悪いことにも使う「±」の単語です。

しかし、「おとしむ」「そねむ」といったマイナスの単語が近くにあるので、「意外で不愉快だ」くらいの意味だと分かります。

文章を現代語訳する時に大切なテクニックなわけです。

具体的な意味は分からないけれどプラスかマイナスかだけは判断がつくという場合は。

プラスの単語は「立派だ」「素晴らしい」「ありがたい」などを、マイナスの単語は「嫌だ」「つらい」「情けない」などの言葉を訳に当てれば何とかなります(とりあえず文の意味が通って完璧ではなくても部分点がもらえる)。

分からないところを空白にして現代語訳するより高得点になる可能性が高いので、やる価値はあるでしょう。

以上、古文の読解問題をより論理的かつ効率的に解くための方法でした。

その気になればこのテーマ、1時間くらいしゃべり倒して説明したいくらいなのですが、ブログではそれができないのでかいつまんでの説明となりました。

細かい用語の説明はすっ飛ばしましたので、分からない部分があっても気にしないでいただけたらと思います。

まとめると、本文や問題文はじっくり読む部分を絞り、本文中にたくさん書き込みを入れることが読解問題を解く上で大切なことだと言えます。

とにかく目と手をせわしなく動かして解くのが大事。

テスト用紙とじっとにらめっこするのは得策ではないということだけでも、ご理解下されば幸いです。
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コメント(6)
mihoyamanaさん、コメントありがとうございます。

私の返信コメントじっくり読んで下さったようでうれしいです。

古文問題、主語を補って訳せとか傍線部の主語を以下の選択肢から選べとかいうのが多くて。やはり主語大事ですね。

「いとにくし、いかがはせむ」のところで吹きました。反語表現!やるせなさがあふれ出ていますね。

息子さんの話、あるあるですよねー。

図が先に目に入ってしまったんですね、きっと。

私もせっかちなタイプで同じようなミスしでかして解き終えた後に気付いていた記憶があるので、これは叱れないです。
by danngo 2017/10/18
dangoさん

やっぱり主語なんですねぇ。文脈から読み取るんですねぇ。ほんと、来世で紫式部に怒鳴り込みですよ。いとにくし、いかがはせむ。

昨日、息子さんがひとりで自主学習してたんですけどね、途中で見たら「文章内の( )を書いてから、図に数字を書きましょう」って問題なのに、数字から書いてまして。問題自体読んでなかったようです。ああいとおかし。

mihoyamana
by mihoyamana 2017/10/18
mihoyamanaさん、コメントありがとうございます。

尊敬語とか謙譲語とか、英語にはないからピンときませんよねえ。

頑張ってお読みくださりありがとうございます。

何となくでも分かればいいなと思い図をつけてみましたので、ああこんな感じねと思っていただければ幸いです。

おっしゃる通り、注釈にほぼ答えが書いてあるケースも結構あります。

時間がないからと焦って読み飛ばす気持ちは分かりますけど、それだと逆に時間の無駄遣いになっちゃうんですよね。

英語は主語がはっきり書かれているから、SVがつけやすくていいですね。

今回取り上げた『源氏物語』の冒頭部分、天皇とか帝とかいう言葉が出て来ないのに天皇が主語になっている文章が出てきます。書かなくても分かるよねと省略しているようなのですが、中高生には分からんから丁寧に書いておくれと紫式部に直訴したいです…。

だからこそ女御や更衣がどんなものなのかを把握したり、敬語に注目して敬意の対象を見極めたりする必要があるんですよねえ。

面倒くさいですね、日本語は。

でも、システマティックに解く癖をつけて読解問題をいくつか練習していくと書かれていない主語も分かるようになっていくので、こういう書き込みを地道にするのが大切なんですよ、本当に。

あと、私が問題文を先に読むようになったのは小学校高学年でしたね。

それまでは文章が短いものばかりだったので、先に文章を読んでも大丈夫だったんですね、多分。
by danngo 2017/10/16
ogifumiさん、コメントありがとうございます。

挫折したのが高校時代ならまだ頑張った方ですよ。

私の教え子の中には中学2年生くらいで「もう古文捨てるからいいです」なんて言ってる子がいました…。

まだ習い始めたばかりでしょうよ、単純にやる気がないだけではないですか、と突っ込んでおりました(^^;

お子さんに勉強教えるのって大変そうですよね、私も頑張らないと。

では、今後ともよろしくお願いいたしますね☆
by danngo 2017/10/16
danngoさん

ええと、すみません。今回途中で難しくて脱落しました、センセイ。出直します。

しかしながらおっしゃってることは、よく分かる、つもりです。

わが子も、国語や社会などの問題文の注釈や、細かい文字を読み落とすことが、結構あります。こっちからすれば「ここに答えがほぼ書いてあんじゃん!」ってなるんですけどね。今後、注意して読むように習慣づけられたらと思います。

システマティックに、敬語に印・ことばの意味に+−印をつける。
現代文や英語にも通ずるものがあると思いました。

小学生レベルの話しかできませんが、現代文は述語をまず見つけることで、そこから主語や単語の修飾の関係を読み解くと早い、らしい。笑

英語は、わたしが教えられたのは、まず主語の上にS(subject)、動詞の上にV(verb)のマークをつけて大まかな文意を読み取ることでした。その後、形容詞はadj、副詞はadvと、区別していき、どの単語に係るのかを見つけるよう教え込まれましたねぇ。システマティックに。

ああ、英語に関してもいつか書きたいなぁ、ほとんど忘れたけど。

でも、「文章より問題に先に目を通した方がいいよ」と子どもに伝えるのは、いくつくらいからが適当なんでしょうね。今も絶賛迷い中です。

mihoyamana
by mihoyamana 2017/10/16
こんにちは。初めまして。
私のブログに来て頂きありがとうございます!

古文の記事、とても興味深かったです。
私は高校で挫折したので、もう少し先ですが我が子の時には参考にしたいと思いました。

またお邪魔させて頂きますね!
by ogifumi 2017/10/15