2018/08/05 22:00
 数か月前、私が所属していた文学部日本文学科から、会報が届きました。

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定期的に届くその会報を私は興味本位でパラパラとめくっていたのですが、近代文学研究をされているK教授の近況報告がとても目を引きました。

教授は薄田泣菫(すすきだきゅうきん)という詩人のもとに届いた手紙という、近代文学の研究者にとって貴重な資料を見つけて研究することになったそうです。

が、K教授は活字世代の人間で肉筆による崩し字に遭遇する機会は稀、チームのメンバーも皆そんな状態とのことで『解体新書』を読み解く杉田玄白状態だったそうです。

最後の最後は近世文学(江戸時代の文学)を研究している後輩に頼り、足かけ9年でやっとのこと作業を終えたのだとか。

教授はそこで、「崩し字を読み解く能力こそが日本文学研究の基本である」といったことを悟ったようです。

崩し字の1つとして教授が言及しているものに、変体仮名があります。

私も学生時代に習ったのですが、これが難解で。

K教授もそば屋の看板が読める程度のレベルでしか把握していないのだそうです。

前の記事にのせた赤い表紙の本には昔の文字がたくさん載っており、そのほとんどが変体仮名。

「さっきから言ってる変体仮名って何よ?」と思っていらっしゃる皆様のために、まずは百聞は一見に如かずということで。

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これが、変体仮名と呼ばれるものの中でも代表的な字をピックアップして書いたものです(本当はこの何倍もあります)。

まだ分かりませんよね。

変体仮名の辞書的な意味は「現在普通に使用されている平がなとちがう字源またはくずし方のかな」(広辞苑より抜粋)です。

要は、古い時代には現代では使われていない形をした仮名が存在し、それを変体仮名と呼ぶわけですね。

平仮名の前に万葉仮名という漢字の読みを借りて日本語の音を表記したものが存在し、それを崩すことにより平仮名が作られていたことはご存知でしょうか。

ところが、当時の人々は好き勝手にどんどん新しい平仮名を作り出そうとしたので、1つの音に対して1つの文字、という効率的なことができませんでした。

「あ」の音を表記するために「安」の字を崩した人もいれば(これが現在の「あ」)、「阿」の字を崩した人もいたわけなのです(こちらが変体仮名)。

こういった多種多様な仮名が存在する状況が変わってきたのが、明治時代。

この時代には、西洋から伝わった活版印刷が普及していきました。

活版印刷は1つの文字が彫られた細長いスタンプのようなものを組み合わせて印刷をすることができ、26文字しかないアルファベット(大文字を入れると倍になりますが)を使う国では非常に効率の良い方法でした。

日本では平仮名、片仮名の他に漢字もありますから、日本の活字の種類は膨大な量になります。

少しでも活字の版を作る負担を減らすため、使われる平仮名の種類が自然と限られるようになってきたそうです。

ちなみに江戸時代は、木版印刷が使われていました。

木版印刷は1つのページを丸ごと版木に彫り印刷したので、文字の間に絵を入れることなども自由自在。

時間がかかりますが、ページごとに彫るので変体仮名を使おうが使うまいが手間は変わりません。

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(実物を見たことがないので、うまく描けません。大体のイメージだと思ってください)

結局、1900年に小学校令施行規則により現代の平仮名が採用され教えられるようになりました。

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(「か」は10種類以上あり激戦でした。投票をしたわけではなく、国民の意志は反映されず違和感を覚える人も多かったようです)

それでも、親から教わることなどもあったのでしょう、現代でもお年を召された方は日常的に変体仮名を使うことがあるようです。

身近な例が、私の父方の祖母でした。

祖母は現在生きていたら90代後半になっている世代ですが、中学・高校生時代の私によく読みにくい手書きの手紙をよこしてきました。

漢字を崩しているものに関しては何となく分かるのですが、平仮名のようなのに何か形が違うものがところどころあって、穴あきの暗号文を解読する気分で読んでいたのを思い出します。

今思い出すと、「可」を崩した変体仮名と「多」を崩した変体仮名を多用していた模様。

達筆な人の字は読みにくいことが多々ありますが、それは普段見慣れない崩し字が混じっていることが大きく関係しているようです。

では、変体仮名はただただ不便な存在なのでしょうか?

いえ、変体仮名があった方が都合が良いこともあります。

ワードなどの文書ソフトで文章を書いている時、冒頭の1字が続けて同じ平仮名になってしまい「何となく嫌だな」と思ったことはありませんか。

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同じ平仮名が意図せずして隣り合わせになるこのいくばくか不愉快な状況、変体仮名さえあれば打破できるのです。

平仮名の「は」が続いて気持ち悪いなら、変体仮名の方(「者」「盤」「八」などを崩したものが存在します)を使えばいいわけですね。

また芸術的な面から言えば、ある言葉を表記するのに使える文字が数パターンあれば、より美しく見える組み合わせを瞬時に選び取り表現することが可能になります。

ひょっとしたら、私の祖母も美しさを追求するあまり変体仮名を使い続けることになったのかもしれません。

言葉と同じように、文字も生き物、はやりすたりがあるのは仕方のないことです。

でも時折そば屋や小料理屋の看板、和菓子の包み、箸袋などからひょっこりと変体仮名が姿を見せる時、大して読めもしないのにときめいてしまう気持ちがどこかにある、それも事実なのです。
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コメント(6)
ヤギコさん、コメントありがとうございます。

そうなのです、「紫にお〜う〜♪」←校歌

いや、私の説明が下手だったのでしょう。少しでも分かりやすくと思い今回イラストを入れましたが、それでも伝わらないですかねえ"(-""-)"

青学の人の大部分はちゃらちゃらというよりきらきらです←母校愛

でも私は履き古して穴が開いたリアルダメージデニムで青山通りを歩いたダサい学生でした。青学生の皆様に申し訳なかったです。
by danngo 2018/08/08
danngoさん青学なの!
そりゃ、私がdanngoさんの話を理解できないわけだわ!←バカ

てか、青学の人ってもう少しちゃらちゃらしていると思っていました。偏見でした、ごめんなさい。
by ヤギコ 2018/08/08
acoさん、コメントありがとうございます。

厚木って大学のキャンパス多いんですよね。そうか、acoさんとどこかでニアミスしていたかもしれないと思えば、通学に片道3時間かけていた苦労も報われます…!

「可」を崩した変体仮名は「の」だと思う人多いと思います。確か他にもややこしいのいますよ。

マニアックな話題に共感して下さりありがとうございます。ウニャウニャしてあまり読めませんが、昔の字って美しいですよね。

活字は便利だけれど、数が限られているから機械的な印象が。だからどこか物足りないのでしょうね。書道やっている人だと変体仮名をサラサラ書けるので、すごく憧れます。
by danngo 2018/08/06
danngoさん こんにちは。

青学!
工芸大の芸術学部にいたので私も厚木でした。
同じお店に居合わせたことがあるかもしれないですね♪

花札の あのよろしが あかよろし だったとはびっくりですが

【そば屋や小料理屋の看板、和菓子の包み、箸袋などからひょっこりと変体仮名が姿を見せる時、大して読めもしないのにときめいてしまう気持ち】
すごく分かります。 私もときめきます。

冒頭の字が同じ仮名になるのも 気持ち悪いですよね。。。
仮名に種類があれば 美しい文章にできる
って ステキだなと思いました。 


aco
by aco 2018/08/06
mioさん、コメントありがとうございます。

そうそう、厚木キャンパスに通っていた世代です^^今は相模原キャンパスになってしまって。

森の里…バスで通ったかも。懐かしいです☆
by danngo 2018/08/06
青学なのですね。
厚木キャンパスは理系だけでしたっけ?
私、実家森の里です。
by mio 2018/08/05