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【連載】熟れすぎMANGO VOL.129

2017/10/11【 連載 】

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ちはるの老眼鏡!?「ノンフィクション人生」

お葬式に行こう

 私は「葬儀」というものをほとんど経験しないまま大人になった。両親の父母は私が生まれた時にはすでに亡くなっていたし、親戚の葬儀も「子どもだから」「タレント(フリーター)だから」誰かから責められることもなく、自らも進んで参列しようとも思わなかった。私のような大人は意外と多いのではないだろうか?

 初めての葬儀体験は23歳の時。最初の結婚後すぐに夫のお祖母さまが亡くなられたのだ。訃報を聞いてすぐに実家へ向かったのだが、なにぶん勝手が全く分からず「長男の嫁はこれを頭に巻きなさい」と白い手ぬぐいを渡され、バンダナのように巻くと「そうじゃない」と呆れ顔で笑われた。ご遺体のお清めを手伝えと当たり前のごとく言われ、人生で初めて遺体に触れて、ましてや拭くだなんて衝撃的だった。

 一度だけお会いしたことがある、ほっぺがリンゴのように赤いお祖母さまは、脱脂綿が鼻の穴からはみ出していて、ただただ硬くて冷たい抜け殻。私もいつかこうやって抜け殻になる日がくるんだ。「死」というものを生で実感する。かなり強烈だったけど、今では貴重な経験をさせてもらったと思っている。

 先日、姉のように慕っている友達のお父さまが亡くなった。相変わらず葬儀には慣れないが、自分にもいつかは訪れるその悲しみに少しでも寄り添えたらと思える年齢になった。斎場に向かう途中、旦那くんからLINE。仕事の合間を縫って顔を出せそうだという。夫婦揃っていつも親身になってもらっているし、若い旦那くんのその心意気を頼もしく感じて、すごく嬉しかった。

 ところが、斎場の前にさっそうと自転車で現れた旦那くん。「うそ? き、黄色いパーカ、しかもハットかぶってるー!まるで原宿にお買いものでも行く格好じゃねーかー!」。悪びれた様子もなく「僕、駆け付けたんだよ。すごいでしょう。褒めて!」と言いたげな得意顔。屈託ないポチぶりに思わず失笑するしかなかった。

 結局、うちのポチはボサボサの髪の毛で季節外れの白いTシャツと辛うじて黒い七分丈のパンツで参列。かなり浮いていたし、彼なりに恥ずかしい思いをして「死」というお別れの儀式を初めて自ら経験したのだと思う。格好はともかく、彼はそれと向き合い涙を浮かべていた。どうしようもなくかっこ悪かったし、私もかなりバツが悪かったけど、どうしようもなく人間らしいと思った。彼は今を懸命に生きている。

 白い手ぬぐいも黄色いパーカもどっちもどっち。悲しみが溢れる葬儀だけど、生きるということの幸せをその中で見つけられたらいい。出来ればなるべく若いうちに「生と死」を自分なりに積み重ねることが大切なことなのではないかと思う。ひとまず、旦那くんの喪服を一緒に買いに行かねば!

文/ちはる

ちはる/テレビ、CF、著書の企画などで活躍中。12年、14歳年下の旦那くんと再婚。 目黒でカフェ「チャム・アパートメント」を経営。

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